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家なし家族のミラクルハッピーホーム:さとうみくる #04 必要最低限の支援とガードレール

#04  「必要最低限の支援とガードレール」  さとうみくる

支援者としてこんなこと言ったら失格かもしれないが、
私の愛するおいちゃん達のなかには生きてさえいてくれれば花丸枠が何人かいる。

朝から酔っぱらう、路上で倒れる、お金は消える……

そんなトラブルや悩みの種が尽きない人達に限って、
何を言っても絶対に絶対に絶対に話をきかないし、
障害の特性上そもそも話を聞けないことがある。

そんな彼らの課題を解決するために、
お酒やお金を制限したり管理したりするやり方もなくはないが、
それでは彼らの人生をあまりにも窮屈にしてしまう。

彼らが彼らのままでうまく折り合いをつけて生きていく方法はないのか?

そんな風に考えるようになったときに支援の大先輩に出会った。

その人はホームレス支援に携わって30年の大ベテランで、胆の据わり方が常人ではない。
いつもどーんと構えて、おいちゃん達の自由を最大限に尊重し、
しかしこの一線を越えたらまずいというところではパッと動く。

そんな彼は「失敗してからが本番だ」ということをよく口にする。

失敗したときに、それでも一緒に居続けること、立ち直り方を一緒に考えること。
そんな時にこそ、おいちゃん達との信頼関係が築かれるし、
支援者としての本領が試される、と。

そんな彼をみていて、何でも先回りして支援したがっていた私は
「おいちゃん達のために」という口実で
ただただ失敗することを恐れていたのかもしれない、と思った。

失敗することで、更に面倒なことになるのを避けていたのかもしれない、とも。

もちろん、取り返しのつかない大きな失敗はしないに越したことはないが、
失敗しながらでも、迷惑をかけあいながらでも、
とりあえずは健やかに生きてさえいればみんな花丸なはずなのだ。

道を間違えぬようにきっちり整備するのではなく、
ここだけはという一点だけは見極めて守る。
壁にぶち当たったたら一緒に考える。

きっと私が目指すべきは「線路」ではなく「ガードレール」のような存在なのだろう。

そんな必要最低限の支援を行おうとするとき
ここは相手を信じて待っていてもいいのだろうか?
大変な事態に発展しないだろうか?
と、心配性でビビリの私のお腹はひゅんとなったりする。

そんなときは、ええい修業が足りない!と気合を入れ直して
おいちゃん達、そして自分と向き合う毎日です。

Text by Mikuru Sato

元ホームレスの個性豊かなおいちゃん達が暮らすミラクルハッピーホームの生活相談員。
血の繋がらない家族をつくるために日々奮闘中。