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DJ NOAH VADER:My Music life 020 Radiohead – “Creep”

My Music Life 020

皆さんこんにちは。

ライス兄弟の弟、チョコレートはビターがお好きな方のノアです。

もともと甘党ではなく、甘いものを食べる時も「甘ーーーーーーーい!!」ていうのよりも、「この優しい甘みが沁みる…」という感じが好きなんです。そういう点ではビターチョコレートは完璧なんですよね。

逆に苦手なのはホワイトチョコレートです。あそこまで甘くなくてもいいと思うし、そもそもなんで白いのかもよく分かりません。

ただ、兄はホワイトチョコレートが好きなので、チョコレートの詰め合わせがあっても喧嘩しないのが良いところ。

ちなみにチョコレート菓子の中で一番好きなのはチョコレートです。

大学時代は食べ過ぎで「チョコボールの人」って言われてました。

あとウイスキーボンボンも好きでした。そう考えたら結構好きなんだな。

さて、冒頭からやたらとチョコチョコ言うてますが、今回はバレンタインデー特集ということで、「ノア的バレンタインデーに聴きたいソング」をお届けします。

前回まで薬物使用にまつわる社会問題について書いてましたが、今回は休憩。だってあそこまで真剣に書くと神経すり減るんだもん。

たまには自分を甘やかしたいよね。チョコだけに。

ただ、バレンタインデーに聴きたいソングと言っても、ノアは単なるラブソングはあえて紹介しません。

今回ご紹介するのは、世の中のマイノリティでありながら、マジョリティでもあろう、「あの子にチョコを渡したいけど、私のことなんて見てくれてないよね…」と思う貴方や、「今年もお母さん以外からチョコもらえんかった…。バレンタインなんてクソだ!!」ってヤキになってる貴方に捧げる曲です。

というわけで今回のDJ NOAH VADER’s RECOMMEND!!!

Radiohead – “Creep”

切ない…。切ないぞぉ…レディオヘッドォ…。

ロック好きはもちろん、音楽が全般的に好きな人なら必ずと言って良いほど耳に入ってくる、有名UKロックバンド、レディオヘッド。

U2などのポストパンクと、ピスシーズやソニックユースなどのオルタナティブロックから強く影響を受けながらも、アルバムごとに実験的なサウンドの探求が伺える、どの曲を聴いても新しい発見が尽きないバンド。

曲作りは、メインの歌詞とメロディーはヴォーカルのトムヨークが担当するものの、そこからメンバー全員、時にはプロデューサーも中に入り曲作りを行い、時にはメインメンバー以外の演奏家も仲間に入れて製作する、オープンな空気を持ったバンドです。

良い曲を作るためなら、みんなウェルカムだぜ、みたいな。とても良いですね。

また、レディオヘッド全体としてはもちろん、メンバーそれぞれが社会問題に対する運動に積極的に参加している事でも有名で、人身売買問題や貧困問題、地球温暖化問題に対するチャリティーに参加したり、ライブで協力を求めたりなど、現在巷で言われる「企業の社会的責任」を借りて言えば、「社会的影響力のある人の社会的責任」をしっかり認識してるバンドと言えます。日本と大違いですね。

もともとロックやパンクは反体制的な精神性を持った音楽である事も大きく影響してるんでしょう。なぜ、ロックやパンクが反体制的なのかは、また今度ゆっくり書きます。今回は残念ながら割愛。

そんな彼らが作った曲で彼らの初めてのヒット曲、Creep。曲調からしてバラードよりですし、ラブソングっちゃラブソングなんですが、ハッピーじゃない方のラブソング。

Creep(クリープ)は英語で、簡単に言えば嫌なヤツとか、キモいやつ、という意味です。

分かりやすい例だと、お風呂を覗くのび太。

しずかちゃんはまだ小学生で心も優しいので言わないと思うのですが、もし「あんた超キモいんですけど」って言うときは、「You are so creepy!」と言ってやりましょう。多分相手は泣きます。

ちなみに、コーヒーに入れるクリープを思い出した人は、残念ですが全然違います。つづりがCreapなので、おいしいだけでこれっぽっちも関係ありません。あしからず。

さて、なぜキモいのか。曲の話に戻って、少々長いですが1番と2番の歌詞をじっくり読みましょう。

“When you were here before

Couldn’t look you in the eye

You’re just like an angel

Your skin makes me cry

(君がそばにいても

ぼくは目を合わせられなかった

君は天使みたいなんだ

君の肌を見てると涙が出てくるんだ)

 

You float like a feather

In a beautiful world

And I wish I was special

You’re so fuckin’ special

(君は羽みたいに美しい世界を舞う

ああ、ぼくが特別だったらなあ・・

君は・・本当に特別なんだ・・)

But I’m a creep, I’m a weirdo.

What the hell am I doing here?

I don’t belong here.

(でもぼくは嫌なやつだ

ぼくはおかしなやつだから

ぼくは一体どうしたらいいんだろう?

ぼくはここにいるべきじゃない)

 

I don’t care if it hurts

I want to have control

I want a perfect body

I want a perfect soul

(ぼくはこの心が傷ついても構わない

ぼくはそれを制御したいんだ

ぼくは完璧な体が欲しい

ぼくは完璧な魂が欲しい)

 

I want you to notice

When I’m not around

You’re so fuckin’ special

I wish I was special

(君に気付いて欲しいんだ

ぼくがそばにいないときも

君が本当に特別なんだって

ぼくもそうありたいんだって)

But I’m a creep, I’m a weirdo.

What the hell am I doing here?

I don’t belong here “

(1番のサビと同じ)

付き合ってるわけでも相思相愛でないのはもちろん、遠距離恋愛でもなく、別れたわけでもなく、好きな子と自分が一緒になることすら叶わないと、ひたすら悲観的になってイジイジしてる思春期の男子(女子も十分当てはまる)の切ない恋心。実は話によると、若い頃のトム・ヨーク自身の恋心を投影した曲だとか。

トムは生まれつき片目が麻痺して見えてませんでした。年中眼帯をつけて、治療の為の手術は失敗する始末。その上色白でヒョロヒョロだった彼は、幼少期を劣等感まみれで過ごします。

そんな中で、ギターと出会いロックと出会い、ある時ライブに来た1人の女の子を見てビビッと生まれたのが、この劣等感という視点から表現されたラブソング。

当時のUKロックシーンでは、こういった言わば「弱々しい」ラブソングは斬新でした。イギリスでは、「ロックは労働階級の歌」という認識が強く、当初この曲は毛色が合わないという理由でそんなにヒットはしなかったのです。ところがどっこい、海を挟んで反対側のアメリカではバカ売れ。「バンドマンのような存在でもこんな感じで劣等感を感じるんだ!!」と共感を持って迎え入れられて、結果本国イギリスでも逆輸入という形でヒットすることになりました。

大ヒットした理由はたしかに分かります。

皆さんはラブソングと聞いて、真っ先にどんな歌詞を思い浮かべるでしょうか?

ストレートに「愛してる」。ハッと気づいたように「やっぱ好っきゃねん」。自分のタイプにどストライクだった「おいしいパスタ作ったお前」。

色々あるでしょう。

ひょっとしたら、Creepのようなネガティブな曲なんて山ほどあるわいな!と思われた方もいるかもしれません。

ただ、先に書いたように当時のロックは圧倒的に「強くあろう」とする音楽でした。自由を歌い、反骨精神を歌い、青春を歌い、人間讃歌を歌い、明日を歌った。

しかし、Creepは等身大の思春期の自分に自信が持てない、恋愛に対して勇気が持てない、高嶺の花の恋をして、その子がクラスの人気者とイチャイチャしてるのを10メートル離れたところから見ることしかできない、そんな自分の状況に歯がゆさを感じるけど、変えたくても変え方が分からない。そんないじらしいまでに素直な想いを寄り添った歌だからヒットした。

裏を返せば、共感する人、「自分もこうだ」と思った人が多かったことを表しているのではないでしょうか?

ここで冒頭の話に戻ってきます。つまり、もしバレンタインデーで意中のあの子にチョコが渡せなくても、好きなあの子が自分じゃない誰かにチョコをプレゼントしている場面を見てしまってヘコんでいる人がいたら、あなたにはCreepに共感した何百万人の味方がいるのです。何百万の人があなたと同じ気持ちだと思うと、少し心強く感じませんか?

そういう意味で、我々はマイノリティであると同時にマジョリティでもあるんですね。

ただ、誰だってモテたい。チョコを、トラック1台分とかじゃなくていいから、せめてあの子から貰いたい、渡したい、と思う人からしたら、「今はこうだけどいつまでもこのままじゃいられない」と思うかもしれません。

実際Creepの大ヒットにより、レディオヘッドは大きく名前を売ることになったのですが、それもそれで問題がありました。先に説明したようにレディオヘッドは実験的でアルバムごとに何か新しい要素を取り入れていこうとするバンドです。ところが、”Creep”の大ヒットにより、ライブに来る人達は皆その曲を聴きに来る。むしろそれ目的で新曲なんてアウトオブ眼中。

レディオヘッドのメンバーの皆さんイラっとしたんでしょうね。”Creep”を演らなくなっちゃいました。

それ以降、レディオヘッドは自分自身の音楽を大きく変えて、ストリングや現代エレクトロ等を取り入れて、メンバー自身も完成した時にあまりにも過激な作品だから偽名でリリースしようとも考えたほど、バンドの変革を行いました。

求められるものより、スタートを切ったままの自分の姿より、新たしい自分たちへの挑戦を選んだのでした。

あまりにも変革が大きかったので、アルバム発売の前評判では「自殺行為だ」とまで揶揄されたその結果は、スマッシュヒット。

周りの事は構わず、自分の求める事を追求した結果、見事に変わったのでした。

それから10年以上経ち、2010年代に入り、レディオヘッドは少しずつライブでもCreepを演奏するようになっています。

あの頃のファンの為のサービスとしても捉えられるでしょうが、あの頃から何度も殻を打ち破ってきて歳を重ねた彼らが歌うCreepは、単なる恋心だけではなく、永遠にたどり着く事はない自分たちの理想を追い求めて、それに比べたら未だに完璧になんてなりきれてないんだという、終わりのない探究心と渇きの歌にも聴こえてきます。

それでは最後に、バレンタインデーにウキウキ、ドキドキ、ワクワク、ムカムカ、ゲロゲロする少年少女紳士淑女の皆さんにレディオヘッドの曲をもう一曲ご紹介!

DJ NOAH VADER’s RECOMMEND Part2!!!

Radiohead – “No Surprises”

美しい鉄琴の音色と、透き通るようなアルペジオが織り重なって、音が三次元的に広がるのを感じれる、一曲。

是非、イヤホンで自分だけの世界に浸りながらお聴きください。

チョコでも食べながらね!

あ、ちなみにボーカルのトムヨークの息子さんの名前もノアだそうです。だからなんだって話ですね。すみません。

それでは皆さん、良い音楽生活を!!

Text by : ライス趙 ノア