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『課題と可能性 ~ミャンマーの医療〜(後編)』:午前0時の診療所 by リアルDr.コトー004

[連載]
午前0時の診療所 by リアルDr.コトー
004

前回の続きです。

手作りの診療所には子供から大人まで様々な年代の方が訪れます。

咳や鼻汁、下痢や嘔吐、
なんとなくだるいといった不定愁訴、
先天性の疾患や成長障害が疑われる子もちらほら。

日本で小児科医をしていれば日々遭遇する主訴や症状を前に
鑑別疾患は上げつつも基本は対症療法、経過観察となりそうなところ、
ここでは広範囲の菌に効く抗生剤を躊躇なく処方していきます。

というのも忘れてはいけない、根本的な違いの一つとしてあるのが、
ここにいる子たちは皆、予防接種を受けたことがない、という現状です。

日本では法律で定められているワクチンがいくつかあり、
それを子どもに接種させることは親の義務であり責任です。
その普及により生命を脅かす病気が劇的に減ったことは言うまでもなく、
予防をしている自覚がないまま、実はしっかり予防されている、という状況が作られています。
(この自覚のなさは実はちょっと問題)

公衆衛生が整わない環境にある新興国ほどワクチンは普及すべきものですが、
1日に何度も停電するミャンマーの村々での冷蔵保存の難しさや、
人材や供給の不安定さなど
「ワクチンが打てない」
という一つの問題を取り上げてみても、その裏には
供給の問題、運搬の問題、エネルギーの問題、医師不足の問題など様々な課題が見えてきます。

すべての環境が整うには時間がかかります。
では今からできることは何か。

この団体では受診を待つ間、栄養指導と感染予防の講義を提供し、
各村にヘルスプロモーターとなる人材の育成にも力を入れていました。
自分がいなくなることを想定し自走していく仕組みを一緒に築いていくこと、
これこそが全ての新興国で通ずる、国際保健を考える上での軸のように思います。

熱心に聞く子どもたち、何度も聞いて復唱する姿
この国の5年後、10年後が楽しみでなりません。

Text by : コトー

都内総合病院に勤める小児科医、時々旅人

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