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『役所の「福祉部門」、実はいらない説』:林檎と成孔をこよなく愛する役人のひっそり連載005

[連載] 林檎と成孔をこよなく愛する役人のひっそり連載005

こんにちは、アイコニック役人こと、ことがみ倫理です。
先週は花粉症によりすこぶる体調がすぐれず、止む無くお休みをいただきました、ごめんね。
皆さまはいかがお過ごしでしょうか。

表題は、入職以来わたくしが抱いている問いの一つです。
一般に知られる通り、行政の仕事は縦割りです。それも一政策課題につき一人行政官がいるような場合もままあります。(◯◯担当専門官、なんて役職もあったりします。)

しかし、政策課題とは、切り出す側面や携わる立場によって、見え方が変わる代物です。
例えば「観光」について考える時、言語障壁の解消や異文化理解の促進、公共交通機関等のハードインフラの見直し、Wi-fi等の情報通信環境の整備、コンテンツ(地域資源)の掘り起こし、あるいはコラボレーション等による付加価値の創造、ブランディングやプロモーション等、多様な観点から検討する必要があるでしょう。

役所だってこの辺りを理解した上で縦に割っていますし、少なからずメリットもあります。
所管の業務領域が明確になることで効率化が図れたり、国・都道府県・基礎自治体との連携がしやすかったり(すなわち、根拠法令が一貫していたり)、流動的な人事でも専門性を高められたりと、ある種合理的です。

でもね、思うんです。


福祉分野に限っては、縦割りの恩恵が小さい、というかデメリットが大きいんじゃないか?

役所の福祉部門は、例えば「高齢者」や「子ども」、あるいは「障害者」「傷病者」、「生活困窮者」等、施策のターゲット別に分かれています。なので、それぞれの部署がそれぞれのターゲット向けの施策を行なっています。
確かに「高齢者」と「子ども」は、属性として重複しようがないし、行政ニーズも異なるだろうし、根拠法令も異なるし、縦に割る意義もあるように思えます。

でもさ、例えば「障害者」「傷病者」「生活困窮者」は「子ども」だったこともあれば、「高齢者」になることもあるし、逆に「高齢者」になって初めて「障害者」や「傷病者」、「生活困窮者」になることだってある。そもそも「高齢者」と「子ども」だって、ニーズが一致する領域もある(介護福祉士と保育士の資格一本化が議論されるくらいだもの)し…考えだすとキリがないのだけれど。

あれ、ターゲットって本当に分かれていたんだっけ?
まるで役所の縦割りのように、漏れなくダブりなく?イッツMECE?

これは福祉部門の中の話だけれど、もっと俯瞰して考えてみたい。
産業労働部門。これもこれとして独立した部門ですが、福祉業界だって産業だし、福祉人材だって労働だし、高齢者も障害者もみんな労働者で起業家だ。
教育部門なら教育格差解消や生涯教育、都市整備部門ならバリアフリー化、文化スポーツ振興にはアウトサイダーの参画促進、広報広聴部門はユニバーサルデザインやアクセシビリティ、人権擁護・差別撤廃部門なんかもう全体的に。

こうして挙げてみると、福祉とはあらゆる分野に横たわる概念であることがわかります。
果たして、福祉が分野として独立している意義はあるのか。
あるいは、福祉を欠いた労働、福祉を欠いた教育に、意義はあるのか。

くどいようですが、縦割りにもメリットはあります。例えば介護保険事業はすべて介護保険法を根拠に動いているのだから、そこに子どもやら他分野やら混ぜ込んだらわけがわからなくなるよ。それはわかっているよ。

それでも役所の福祉部門は可能な限り解体して、他分野に分散されるべきだと、わたしは思う。

福祉が福祉部門として独立している限り、他分野から「それ(「保育士の確保」でも「生活困窮者の教育格差解消」でも、任意の政策課題を入れてね♡)は福祉部門でやってください」と言われてしまうわけでしょう。
言わないまでも、それを前提として組織は動くわけでしょう。

そして、悲しいけれど、福祉的な政策課題は福祉だけでは解決できません。
福祉人材の確保で言えば、福祉業界そのものを拡大する必要があるわけで、それは労働市場というパイの再配分に他なりません。
また、どんなに社会福祉施策に税金を投入しても、他分野が運用する「社会の仕組み」自体が「福祉的な運用」にならない限り、対処療法に止まります。
現場で働くみなさんは痛いくらい実感しているかもしれませんね。

だからシンプルに、一緒にやろうよ、って思うんです。
問題提起だけして具体的な提案がなくてごめんなさい。
役人失格。それでもいいよ。

≪ことがみ倫理の政策ミニ講座≫

突然始まるミニコーナー。
ここではぶっちゃけ何してんのかよくわからない役所の施策を紹介するよ。

その1:受験生チャレンジ支援貸付事業【都内区市町村】
一定の収入要件を満たす世帯の受験生(中学3年生、高校3年生等)の塾費用や受験料を無利子で貸し付ける制度。しかも合格すると返済免除。
生活困窮者対策と教育格差解消を兼ね備える良い事業です。
対象世帯なら使わない手はありません。お住いの区市町村窓口へ!(受付は例年4月から)

※掲載内容はことがみ倫理個人の見解であり、所属するあらゆる団体の見解ではないよ。

Text by : ことがみ倫理

福祉・衛生行政に携わる自治体職員
椎名林檎と菊地成孔をこよなく愛する
ひっそりミスiD2018セミファイナリスト
@ktgm_rinrin