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『絆』:ファンタジーガールのワンダーランド008

[連載] ファンタジーガールのワンダーランド008

『Kaoちゃんと過ごす日々は、まるで鍵がたくさんかかった宝箱を開けて行くような日々だ❤︎』と、前回の最後に書かせていただきました。これから先の連載は、しばらくの間、Kaoちゃんの成長過程の中で具体的に取り組んで来たことを分野ごとに分けて綴らせていただきたいと思います。私とKaoちゃんの宝箱の謎解きです❤︎
今からお話しすることは、あくまでも、私がKaoちゃんと共に生きる中で、Kaoちゃんにとって有効だと感じたアプローチであります。言うまでもなく、専門的な資格を有して行っているものではありませんし、他の自閉症の方にも同じように有効だと言えるものではありません。
軽度から重度の方もいらっしゃいますし、特に『自閉症スペクトラム(ASD)』には、『100人いたら100の症例がある。』とも伺っています。個人の状態により、必要なアプローチは異なって来ますし、考え方も感じ方も違うものだと思います。
それをご理解いただいた上で、私の家族としてのKaoちゃんに対するアプローチが、どこかで誰かのヒントになる事を願いつつ、記録として書かせていただきます。

さて、Kaoちゃんは生後間も無い頃、アイコンタクトが取れなかったり、抱かれることや手を繋ぐこと、触れられることを極端に嫌がる状態にありました。生まれたばかりの頃は、母親への後追いや赤ちゃん特有の周囲に愛想を振りまくような姿が、あまり見受けられなかったのです。そのことが私としては、当時、とても心配でした。ですから、私がKaoちゃんの異変に気づいて以来、1番に心がけて来たことは、Kaoちゃんの愛着意識と行動の芽生えを促して行くことでした。

とはいえ、以前に別の記事でも書きましたように、Kaoちゃんに『愛着行動がなかった。』というような解釈は、全くのお門違いであります。正確には、『一般的な愛着行動とは違う方法で愛着を示していた。』ということです。又、ここで言う『一般的』と言うのは、『多数派』のことであって、『普通』と言うような意味ではないと思います。人間は一人一人、みんな違うのですから。

私は後になって理解したのですが、Kaoちゃんが生後間もない頃、抱かれることを嫌がったり、手を握ることが苦手だった背景には、ちゃんとした理由がありました。自閉症の多くの方々は、『感覚過敏』と言う症状を持っています。日常の光景が眩しい。聴きたい音を選べず、様々な音が聞こえ過ぎてしまう。匂いや香りを強く感じる。肌から感じる感覚が鋭敏で、洋服を着ている事でさえも煩わしく感じるなど。Kaoちゃんも同じく、このような特性を持っているようです。その為か、乳幼児期、触れられることを嫌がる傾向が顕著にありました。抱きしめられること以外にも、寝るときに体に掛布団をかけることができなかったり、外出時に抱っこ紐を使う事も出来ませんでした。体を締め付けらたりするのは、とても不快だったようです。

Kaoちゃんは、今でも布団をかけることが苦手だったり、長時間、手を繋いだりすることには苦手さがあります。肩がこるような服も好みません。それでも、2歳が近づくと、自分から抱きついて来てくれるようになり、手を差し出してくれるようにもなりました。一度、乗り越えてしまうと、むしろ、抱っこ魔がはじまり(笑)以来、甘えん坊将軍であります❤︎(笑)
現在も、すきあらば、抱っこ!抱っこ!

しかし、そこへ至るためには、無二の信頼を得ると言うこと以外にはありませんでした。Kaoちゃんが『この人になら。自分の身を預けられる。』と信じ切ってくれる『絆』を作ることです。安心と信頼が伴う、愛着の土台を築く。『自分は愛されている。』という確信、『どんな自分も受け入れてもらえる。』と言う安心感を持ってもらうことが大事だったのです。

具体的には、まず、私とKaoちゃんにとって、1番最初に確実なスキンシップの機会を図ることが出来たのは、授乳の時だったと思います。生き物は、お互いが触れ合うことにより、ドーパミンとかオキシトシンなどの脳内物質を生み出すことができる。喜びなどを感じるホルモンで、『愛情ホルモン』と呼ばれるようなものだそうです。母親が赤ちゃんに母乳を与えると言う行為には、赤ちゃんが健康に育つと言う『栄養学』の視点からだけではなく、お母さんと触れ合うことにより赤ちゃんの脳神経への良い刺激をもたらすと言った生物学的根拠に基づく発達促進のメリットがあると考えられているのです。
まぁ…、如何にも詳しいみたいな言い振りの私ですw 白状いたします!笑っちゃうような話ですが、私は、兼ねてから健康番組だとか、生命科学の神秘を紹介するようなテレビ番組を観ることが大好きでして。そのテレビっ子豆知識です(笑)とにかく、そのテレビっ子豆知識によると…

えー、早い話が『愛』です!(笑)

とにかく、なんでも『愛、愛、愛の愛情固め!』が、生き物の健康や蘇生にどれ程の影響をもたらすかと言うことは科学的根拠、生物学的根拠に基づいて、テレビ史上、あらゆる番組で紹介されて来たことなのであります!!
いや、これ、ホントなんです!本気ですよ❤︎

そこで、私はKaoちゃんの異変に気付いた当初、若干戸惑いながらも、自然に直感と言うか本能で、授乳を大切にしようと思いました。母親の本能なのか、それともテレビっ子本能なのはわかりませんが…w

授乳の間、Kaoちゃんと目が合わずアイコンタクトが無くても、出来る限り、Kaoちゃんの顔を見て、Kaoちゃんに意識を集中し、声かけをしながら、授乳を続けることを心がけていました。一方通行でもいい、根気よく関わり続けることです。目が合わないからと言って、Kaoちゃんが私の温もりを感じていないわけではありません。『私の温もりを通して、想いは必ず、伝わる。』と思っていました。

私の病気、骨形成不全症は、骨が弱く簡単に骨折をする病気です。私にとって、授乳は、少しリスキーな内容ではありました。自分の為の栄養分やカルシウムを失うことになりかねません。又、授乳をする為の抱える体勢を維持したりすることは、身体に大きな負担となります。しかし、そう言った苦労よりも、Kaoちゃんと深く関わることの意義と幸福の方が、遥かに重要だと感じていました。ある程度、月齢が進むと1歳前から1歳半までの間に、断乳をすると言うのが一般的に多いケースだと思いますが、私の場合は、Kaoちゃん自身が『もっ、もう、結構でございます…。』と言うまでは、授乳をする。いわゆる、『卒乳』と言われるものですが、その段階まで、授乳を続けました。授乳は、Kaoちゃんとスキンシップを図る最大のチャンスだと捉えていたからです。

そして、生活に於いては、『Kaoちゃんの愛着の土台を盤石にする。』と言う、私の想いに対して、夫をはじめ、実家の両親や兄、妹夫妻も、皆が一丸となり、私の子育てを支えてくれました。限りない愛情でKaoちゃんの全てを受け止め、『一家の輪』の中で、共にKaoちゃんを育てて来てくれた。家族には、本当に感謝しています。
Kaoちゃんがしっかりと愛着を示していける環境作りをする。家族との揺るぎない『絆と信頼』が確立されればこそ、生涯に渡り、どんな人とも『信頼』をベースに関わり合い、人間関係を深めていくことの出来るKaoちゃんに成長してくれると、私は、信じています。

ありがたいことに、私が車イスでは物理的に不可能なことや力が必要な作業、同行支援が必要なシチュエーションでは、夫と実家の母が多いに手伝ってくれ、Kaoちゃんとの絆も深めてくれました。そう言った家族のサポートがあるからこそ、私自身はママとしてKaoちゃんにしてあげられることを出来る限り自分の力で行い、Kaoちゃんとの『絆』を強固にすることをこの約7年間の要として来ました。
車イスなので膝に乗せながらではありますが、抱っこにも挑戦し続けましたし、オムツを替えたり着替えをさせたりすること、お風呂に入れること、食事を作り食べさせることなど、Kaoちゃんの身辺の事は、誰かに任せきりにするのではなく、私の手で出来る限り行うように努力して来ました。特に病院や保育園への送迎は、必ず、私が車を運転して、自ら連れて行くようにしています。

実は、私は車イスですが、我が家には現在、家事援助などのヘルパーさんが入っていません。家事は、夫と分担して協力して行っています。あとは、食器洗い機とか、洗濯乾燥機とか、家電にも頑張ってもらいます(笑)協力的なパパにも、家電にも(笑)、本当に感謝の想いです。

ちょっと説明がややこしいですが、ヘルプを必要とする人が、ヘルパーさんを利用することに抵抗があると言うことではありません。ただ、今の私には、ビジョンがあるのです。

私が上手くできないながらでも、台所に立つ姿、掃除をする姿、車を運転して送り迎えをする姿。又、色々あっても、パパとママがお互いに譲歩し合って、なんとか家庭を切り盛りしようとする姿などを Kaoちゃんに見せ続けて行きたいという想いがあるからなのです。Kaoちゃんは、身体的にはとても健康な状態ですから、将来は自立生活をしていくでしょう。日本の福祉制度の現状では、ASDの場合、将来の状況によって福祉制度を充分に利用出来ない可能性がかなり大きいのであります。何よりも、Kaoちゃんは 大人になり、いつの日か新しい家族を持つ日が来るかもしれません。『自分自身が生きる。』と言うことだけでなく、自分自身が家族を守っていく存在になっていくことだってあると、私は思っています。誰しも、少なからず親の背中から、生きるすべを学んでいくものです。将来、そんな日が来たら、きっと、Kaoちゃんは、私たち家族の背中を思い出して、それを頼りに家族への『愛』を表現するすべを見出してくれると思うのです。

「家族を持つ時が来たら、『家族を守る』という事の主体は、常に自分自身にあると言うことを片時も忘れてないでほしい。」
これが、私のKaoちゃんへの未来まで見据えた背中で語るメッセージであります。

さて、とても嬉しいことに、Kaoちゃんは、みるみると成長する中で、独特の表現方法も交えながら、しっかりと自分から愛情表現をしてくれるようになって行きました。特に2歳を過ぎてからの家族との関わり方は、本当に愛情豊かな表情と行動とに溢れています。1歳前の状況が、まるで嘘のようです。
Kaoちゃんは、今でも抱っこ魔(笑)

最近、Kaoちゃんの身長が、私の身長に迫りつつあり、もはや、てんこ盛り状態(笑)私は、『これ以上の抱っこは無理。』という日が来る極限まで、Kaoちゃんの抱っこ魔を受け入れたいと思います。なんて言っておきながら、私が子離れしないだけかもね?(笑)
ちなみに、私は歩けませんし立つ事もできませんが、この状態で足を使い、車いすを漕ぐことができます❤︎だから、後ろから誰かに押してもらうことは、滅多にありません。かなり、不思議な光景です(笑)

こうした私の想いや行動が、Kaoちゃんの目には、どんなふうに映っているのか、正直、まだ、わかりません。私が良いママになれたかどうかは、Kaoちゃんが大人になった未来に、Kaoちゃんが決めるべきことなので、今はまだ、道半ばです。あとあと、「ママは、うっとうしかった!」とか、「いろいろ、腑に落ちなかった!」と言われることも覚悟の上(笑)
それでも、泥臭くて、完璧でない私だからこそ、伝えられることもある。こんな私の毎日が、正しいのかどうかは、未来になってみないと、わからないけれど、少なくとも、これは私にとって本当に幸せな、Kaoちゃんとの掛け替えのない日々なのです。今は、私が信じたことを貫くのみ。

次週のファンタジーガールは、『天地逆転!ファンタジーガールは、舞空術も使えてしまう❤︎地面はいったいどこにあるんだ?!万有引力の法則を覆せ!!』です!こんなドラゴンボールみたいな長いタイトルではないけど(笑)
また、よろしくお願いいたします。

Text by : Aki
姉妹デュオグループSAKURANBOで活動中のシンガーソングライター
ワンダーランドで就業中の車イスUserママ(先天性骨形成不全症)
https://www.facebook.com/sakuranbo.music.info/

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