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『発話スイッチ ON』:ファンタジーガールのワンダーランド010

[連載]
ファンタジーガールのワンダーランド010

Kaoちゃん、2歳過ぎて全くの発話無し。

ファンタジーガールは、限りなく無口でありました。一般的には、1歳半までには、1語以上「ママ」「パパ」などの意味を持つ言語を話すようになるのが、子供の『定型発達』と呼ばれる状態だそうです。しかし、Kaoちゃんの場合、生後8ヶ月ごろまでは確かに発していたはずの「あーあー。うーうー。」と言う喃語が、いつの間にかパッタリと消え、本来、発話しだすという時期に差し掛かった途端に、声すら聞けなくなってしまったのです。
笑う時のゲラゲラ声と、泣く時の巨大な声以外には、赤ちゃんに見られる喃語と言うものが殆んど聴こえてこなくなりました。
いついかなる時も、だんまりしていたKaoちゃん。

自閉症の人の中には、なかなか言葉を発する事が出来ない方も多くいらっしゃいます。もし、Kaoちゃんが重度の場合には、言葉の習得がほとんど難しい可能性も、ひょっとしてゼロではないのかもしれない…。2歳を過ぎたころ、ふと、そんなことが頭の片隅によぎるようになっていました。

『Kaoちゃんをどうしたら、発話させられるだろうか?』と言うことが、コロボックルの直近課題だった、そんなある日のこと。

私は、何かの拍子にテーブルに飲み物をぶちまけてしまったのです。その時、慌てて、「ティッシュ!ティッシュ!」叫んだ。

すると、少し離れた場所に座って黙々と遊んでいたKaoちゃんが、突然、立ち上がりました。そして、奥の部屋からティッシュをたった1枚だけ指で摘むようにして、ヒラヒラさせながら…、さらには千鳥足で揺らめきながら駆けてきました。
その姿は、まるで1匹のモンシロチョウと戯れる乙女のよう❤︎ひらひら〜、ひらひら〜、ひらひら〜❤︎

私の前をひらひらと飛び回り、クルクルと飛来する。そして、またモンシロチョウは華麗に旅立って行った(笑)

渡さないんですね、そのモンシロチョウ(T . T)

しかし、華麗なモンシロチョウとファンタジーガールが戯れの彼方へ消えた時、コロボックルは重大な事実に気がつきました。

えっ??!
今、Kaoちゃんは、私の「ティッシュ!ティッシュ!」を聴いていたのね!?

それは、未だかつてない、画期的な反応でした。今まで、何を語りかけても、だんまりとしていて、さらには目線もなかなか合わせてくれなかったKaoちゃんが!私の「ティッシュ!」の雄叫びを聴いてくれていたのです❤︎

例え、テッシュ1枚だけだったとしても。そして、それが、一瞬にしてモンシロチョウへ変幻したとしても。
それは、Kaoちゃんのキャッチした、コロボックルからのティッシュ!SOSだったのです!

「こっ、これは!!!!!これは…Kaoちゃん、しゃべるぞ、きっと❤︎」

その時、私は確信いたしました。Kaoちゃんは、きっとしゃべれるようになるに違いない。
このモンシロチョウの一件でわかったことは、Kaoちゃんが既に『ことばの意味』は理解しているということなのです。ティッシュ=モンシロチョウ…あっ、違った、あの白いティッシュのことであると言うことがわかっているということ。

おぬし、脳ある鷹!!!!!!!!!

しかし、その脳あるファンタジーガールは、「言葉」をコミュニケーションツールとして実際に使用すると言う概念に、その時はまだ、気付いていなかったのか、もしくは、必要性を感じていない状態にあったようです。

コロボックル、考えました…なんでもよいから何かKaoちゃんの言葉のスイッチを入れる方法を見つけなければ…。

色々と考えているうちに、不意にKaoちゃんの好きなDVDが頭に浮かんで来ました。それは、『あいうえお DVD』です。
何かストーリーがあるわけではないのですが、ひたすら『あ…あり、あめ、 あか…』と言うような、『あいうえお』の言葉を映像で子供に教えてくれるDVDです。
Kaoちゃんは、そのDVDがとても好きで、かぶりつくように見ていることが、よくありました。

それで、ふと…、以前に『自閉症の方の中には視覚野からの情報取得に優れている人がいる。』と言う文章を見た事を思い出しました。赤ちゃんは、耳から言葉を聞いて、それを真似る事で発話をするのだと思いますが、ひょっとして、Kaoちゃんの場合は耳からよりも目からインプットをしようとしているのでは?
だから、『あいうえお』の五十音は、すでにある程度、文字というか形として知っていて、物の名前もかなり知っているのではないか?っと思ったのです。

肝心なのは、文字や視覚情報として言葉を理解していたとしても、それを実際に音として発音しなければ、人間同士のコミュニケーションは残念ながら成立しないという現実を知ってもわなければならないことです。Kaoちゃんの場合『発音して声に出すこと。』という部分が、なんらかの原因で定型発達とは違っている状態でした。

でも…、
そこで、またコロボックル的な妄想を巡らせてみる…。

もしかしたら、テレパシーのように想っただけで、人と分かり合える方法をKaoちゃんは知っているのかもしれない…。ひょっとして、まだ、言葉なんか使わないと分かり合えず、時には言葉によって傷付き傷つけ合って争いが絶えない人間社会は、とても文明が低い状態なのでは?(笑)ひょっとして、「テレパシーによるコミュニケーションができないなんて…。ママ、話にもならない困った人よね…。」っと、Kaoちゃんからしたら、そのぐらいの高い次元の話なのでは?!

そうか…必ずしも、私たちのやり方が高度だとは言えない。宇宙の視野で言ったら、180か国以上もある世界が地域により多言語を喋り、近年に入り英語を使える人だけが『国際人』だなんて呼ばれている地球は、まだまだ、宇宙の片隅の………

えーー、これ以上書くと、コロボックル妄想劇場が終わらなくなる上、更には連載タイトルを「SFファンタジーガール」に変えなければならなくなり、次回は『コロボックル、ヨーダへ弟子入りの巻』みたいな…、スタウォーズ絡みのことになるといけないので、ここまでにしたいと思います!(笑)

さて…
何はともあれ、残念ながら、コロボックルは、今のところ、まだ未来の宇宙テレパシーコミュニケーションを確立する能力がなく…、ヨーダに弟子入りも一筋縄ではない。Kaoちゃんのテレパシーを受信できないなんて…、申し訳ないことだけれど。

Kaoちゃん…、なんとか、私たちの方法に合わせてはもらえないだろうか?(笑)是非…。

そこで、思い直して、さらに、考えました…。

発話スイッチ、発話スイッチ…発話スイッチを押すにはどうしたら?
私たち、どんな時に口を滑らせて、思わず声を出すのだろう?
びっくりしたとき?怖いとき?くすぐり倒されたとき?

いや、そんなバカな発話スイッチは、絶対にあり得ない。

んんん〜。

………。
………。

…………、あっ!!!!

コロボックル、ひらめきました❤︎

題して、『バレーボール日本代表 応援団 作戦』。
これだ、これで決まりだ!!

説明しましょう、『バレーボール日本代表 応援団 作戦』とは…。

バレーボールの試合の際に、観客席で巻き起こる、『チャッ、チャッ、チャチャチャッ、チャチャチャチャッ、ニッポン!!』という、あのリズムに合わせて、ことばを覚えてもらい、最後の『ニッポン!!』の部分を思わず言わずには絶対に居られないと言う人間の心理を利用する作戦である!!

そこに更に視覚野からの情報を織り交ぜるのだ。
ちょうど、自宅にぴったりのものがありました。

木製の『あいうえお 積み木』です。

コロボックルの作戦が始まりました。まず、日本代表を応援するリズムを完璧に覚えてもらい、Kaoちゃんの頭から離れないような状態になってもらいます。

まず、1番最初に言って欲しかった言葉は、もちろん『ママ』です。
だから、まずは、『ま』の積み木から行きました。
『ま』の積み木(文字の方)をKaoちゃんになるべく見せながら、積み木の箱を日本代表応援団リズムでたたき、リズムに乗って音を教えます。その際、『チャッ』ではなく、もちろん『ま』でリズムを踏む訳です。

つまり、『まっ、まっ、まままっ、ままままっ、ママ!!』であります(笑)

これを耳にタコができるんじゃないかというくらい、3日間くらい続け、Kaoちゃんが知らんぷりしていたとしても、横でやり続けた訳です。

そして、いよいよ、運命の作戦決行の瞬間が訪れました。最後の『ママ!!』を言わないようにするのです。

「あー、また、ママ、『ま』の積み木、持ってきたよ…。」と思っているであろう、Kaoちゃんの目の前で、コロボックルは積み木を振りかざし、箱をたたき始めた!!

「まっ、まっ、まままっ、ままままっ…。」

んっ!!?
Kaoちゃんは、無口にだんまりしていました。
しかし、私の方を見て、何か口をポカンと開けていた。あの表情は今も忘れられません。

それは、まるで、「あれ、『ママ!!』って言わないの?」と言うような含みのある表情でした。

いいぞ、いいぞ、どうだ、気持ちわるいだろう、Kaoちゃん!!
最後、「ママ!!」って言い忘れてるんだぜ?(笑)

よし、もう一回だ!

「まっ、まっ、まままっ、ままままっ…。」

……。

「まっ、まっ、まままっ、ままままっ…。」

「まっ、まっ、まままっ、ままままっ…。」

何度かやり続けた、その時です!

「まっ、まっ、まままっ、ままままっ…」

「ママ…」

!!!!!!!!!!!!

言った!!
うそ!!本当に言った!!Kaoちゃんが、「ママ」って、「ママ」って言った!!

「Kaoちゃん、すごい!そうだよ、ママだよ!すごい!天才だよ、すごいよ!」とベタ褒めの嵐です❤︎

これが、言うなれば、三重苦を乗り越えて生きた、かのヘレンケラーが、はじめて「Water」を理解した瞬間の訪れのようなものです。日本代表応援団、ありがとう!!

何度かやって、「ママ!!」が完璧に言えるようになった後、2つ目に教えたのは、あえて応用を使い、「まっ、まっ、まままっ、ままままっ、馬!!」と言う、間に『う』を挟むと言う技です。これは一文字の発音に執着させずに自由度を高めるためにやってみました。
二言目が、『パパ』じゃなかった事で、パパとはプチ喧嘩をしたことは、さて置き(笑)

なんと、Kaoちゃんは遂に、『ママ』と『うま』を発音できるようになったのです!
それは、2歳7ヶ月の時でありました。

その事を後日、医療センターの主治医にご報告した際、先生が大きく頷きながら「お母さん、作戦勝ちですね!」とおっしゃってくださったのでした。

コロボックルは、嬉かったです❤︎

その後、4歳が近づくころ、医療センターで言語療法と言う、ことばのリハビリテーションを専門的に受けて、グッと力を伸ばす事になるKaoちゃんですが、それまでの間、Kaoちゃんはコロボックルによる独特の不思議発話訓練を受ける事になります(笑)

Kaoちゃんには、もともと素質がありました。だから、私が何もしなくても、やがては言葉を話したでしょうし、発話は時間の問題だったかもしれません。
それでも、たった一言でいい、「ママ」と呼んで欲しかった。はじめて、「ママ」と聞いたとき、本当は嬉し涙でいっぱいだったんです。

『わかり合いたい。』

愛する我が子と、心を通わせて、わかり合いたい。

その一心で、コロボックルは頭をひねり続けます。

次週は、『ことば』をコミュニケーションツールとして実践使用する訓練について。とんでもない飛び道具を使い出す、コロボックル!遂にヨーダに弟子入りかもしれません(笑)フォースの力を信じよ!

あっ、最後にご報告を❤︎4月に小学校に無事に上がりました!!てんとう虫みたい(笑)とても、頑張っています❤︎

また、よろしくお願いいたします!

Text by : Aki
姉妹デュオグループSAKURANBOで活動中のシンガーソングライター
ワンダーランドで就業中の車イスUserママ(先天性骨形成不全症)
https://www.facebook.com/sakuranbo.music.info/

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