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『本当にあった怖い話』:天才と変態の連載012

[連載] 天才と変態の連載012

革・・・
獣などの皮をはぎ取って毛を取り除いたもの。
陰干しし、なめしたもの。

革製品を何年も使っていると味わい深い色になり、ツヤが出てきます。
人はそれを「エイジング」や「経年変化」というおしゃれな言葉で表現します。

僕は革製品やジーパンが好きなのですが
それは経年変化が楽しめるから

だんだん自分の体に馴染んでくるのが可愛いです。
可愛すぎるんです。
この愛着が酷くなってくると
好きな人と付き合えたその日に
革製品やジーンズの味について語り出すので(モヒカンの素晴らしさも)
相当めんどくさいやつです。

先日お伝えしたように、スマホも財布もなくしましたが
今回も革のスマホケース、革の財布
なくさないように各々に革の紐が付いております。

29歳の春
「もう直ぐ20代も終わり30歳になるのか・・・」
「何か思い出に残るものを作ろう」

と考えに考え
当時、まだ祖父母にお小遣いをもらっていたので
(べ、別に全然欲しくなかったんだけど、「孫」という役割に徹するためだよ!!)

祖父母からもらう小遣いを一年間貯めて
オーダーメイドの財布を作ろう
と思ったわけです。

そうすることで、祖父母が亡くなった後でも
常にそばにいてくれる気がして。

実際に30歳手前で完全オーダーメイドの
財布とウォレットチェーンを作りました。
7、8万かかったかな。

財布をなくさないためのウォレットチェーンを
酔っ払ってなくしたのは、もうD.Dあるあるですが・・・

オーダーメイドなんで
好きなように作れるのです。

財布を作った時の祖父母への感謝の気持ちを忘れてはいけないと思い
財布の内側に
祖父母4人と自分の名前&年齢を刻印してもらうことにした。

KAZUO / YUKI
KEN / MISAE
DAIGO.30

素敵なアイデアだ。
大好きな家族の名前が刻印された財布。
みんなの名前も、かっこよく見える。
尊敬する健(ケン)お爺ちゃん
ハイスタの横山健と同じ名前かよ!
最高だな〜
なんて思いながら。

待つこと数か月
想像していた以上のヌメ革の財布が完成した
なんて美しいんだろうか
いてもたってもいられず
母親に自慢しに行った

D.D「母ちゃん、俺さぁ、爺ちゃん婆ちゃんからもらった小遣い貯めて一生モノの財布作ったよ」
(安定したサラリーマンにはならなかったけど、心の優しい青年に育っただろ。よかったなぁ母ちゃん。育て方間違ってなかったよ!)

どれどれと興味を示し財布を舐めるように見る母

母「あら素敵な財布じゃない」
(そりゃそうだ。フルオーダーメイドのヌメ革の財布だぜ)

D.D「しかも中にはみんなの名前が入ってるんだよ。かっこいいだろ?」
(さあ、驚くがいい!!)

ドヤ顔で母親に財布の内側を見せる僕。
その時の母親の驚いた顔は今でも忘れられないなぁ・・・

母「あんた!じいちゃんの名前、健(ケン)じゃなくて(タケシ)だよ!!!!!!!」

大好きなお爺ちゃん
ごめんなさい
なんか、名前間違えて刻印してました。
そういえば(タケシ)だったね・・・
名前は確かに重要だ
自分の両親からもらう初めてのプレゼントとか言うし
なんか間違えたみたいだ
30年も接していたのに
でも名前は、僕にとって記号でしかなく
そんなことより貴方がどんな人かってことが重要なんです

お爺ちゃんは財布に名前を入れたくなるくらい
素敵でダンディーな男
戦後一人で家族何人も何人も養った
本当に尊敬できる男の人
貴方が戦火を駆け抜け、捕虜になっても生き延びてくれたから
僕は今ここにいます
ありがとう
また、千葉に帰ったら一緒に酒を飲もう。
そして、戦争の話聞かせてよ
僕もまた下の世代に伝えていくから

あ、遅刻する。
またねー。

今日の押し付けの一曲
「無計画という名の壮大な計画」 トモフスキー

※ 物語はフィクションです。用法・用量を守って正しくお読みください。
 読み込みすぎると、一般的な価値観、常識から逸脱する可能性があります。

Text by : Dyson Daigo

特別養護老人ホーム職員 & LOVE AMAプロジェクトリーダー
真面目と不真面目のギャップが病的な36歳
http://www.love-ama.com

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