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『旅の途中』:天才と変態の連載016

[連載] 天才と変態の連載016

婆ちゃんが胆嚢炎になり緊急手術したそうだ。
離島から急に会いに行くことは出来ない。
しかしながら何と言う幸運。
実家に帰る予定があったので、その足で病院に。

部屋に入ると
酸素、経管栄養、バルーン、胆嚢に刺さったチューブ
そしてツナギを着用し
手はベッドに抑制されている
管だらけだ。


(時折なるアラームが怖い)

何があったかはわからないが
どうやら点滴などを外してしまったせいで身体拘束されているようだ。
見た目が痛々しくても
彼女の命を守るために仕方ない事だ


(手のひらに乗ってる磁石が無いと外れません)

俺に気づくと安心したのか「めちゃくちゃにされた」と泣きじゃくった

唇は乾燥してガビガビ
腕はアザだらけ

それも仕方ないんだ
ばあちゃんは悪くない
病院も悪くない

病院で生きるとは
そう言う事だ

入院して一時的に混乱して
見当識も落ちている

医学がすすんで
綺麗にアッサリ終わるってのが
難しいよなぁ

でもやっぱり会えてよかった
病室に7時間くらいいて
その間に爺ちゃんや従兄弟が見舞いに来たんだけど
医者と看護師だもんで
計器を見たり点滴を見たりして盛り上がっている。出る幕なし。
婆ちゃんは話し疲れたのか寝てしまった。

病室にはこれでもかっていう
カチカチの丸イスがあるんだけど
けつ痛いし、落ち着かないから
俺も婆ちゃんのベッドの足元に入り昼寝

俺の昼寝が終わると
従兄弟と俺の孫パワーが効いたのか婆ちゃんは饒舌に。
婆ちゃんにはお気に入りの話があって
そりゃーもう
何十回聞いたかわかんない
可愛いグチ
「結婚の挨拶に来た時の礼儀がなってない」
「あそこはヤブ医者」
「グズってご飯を食べなかった時、本気で説教した」
などなど
親族なら耳タコでお腹いっぱいなハズだが
この時ほどこの話を待ち望んだ事は無かった
「そうだ!もっとこい!キレろ!なぎ倒せ!ほとばしる生命!生きる!生きる!!」
随分自分を取り戻してくれた。

翌日、島根に帰る前少し顔を出した。
自分がプロポーズされた時の話などを思いつくままに楽しそうに話してた。
平常時より小声だし、水分が足りないからボソボソ話しているので
注意深く聞かないといかんのだが

「館山に住んでる時、、、孫の、、髪型が急におかしくなって、、近所の目が気になった、、」

それ、俺ね!

大学の頃
まとも(と言われている)なフリをするのが面倒くさくなり金髪のモヒカンで祖父母宅に遊びにいったら
祖父母が「良い子ちゃんのダイゴ」の変貌ぶりにパニックになり
爺ちゃんに
「ダイゴ!家に入ったら帽子を取りなさい!」

って叱られたけど笑
髪の毛だから!
金色のモノが帽子ではなく髪の毛だと知ると
叱る気持ちなくなり、がっかりしてたなぁ。
懐かしいよ。

もう歳だから
いつ亡くなってもおかしくない
こうなると
生きるのは楽じゃない


(秋から実写版ドラマが放映する「天」)

だから生きてとは言えない
けど何となく
まだ生きたいって伝わってきたんだ

家にいた頃
会うたびに
「もういつお迎えが来たっていい」って言ってたのに
半分無意識みたいな今の状態で
「死にたい」だの「どうでもいい」だのって言わないのは
たぶん「生きたい」んだ。

死にたいってのは生きたいの裏返しだって友達が言ってた。
本当に「死にたい」んじゃなくて
こんな状態なら「死にたい」だけなんだよな、きっと。

婆ちゃんとは散々遊んだ
きっと、どの友達よりも遊んだ
今振り返ると親友だ
買い物行って、飯食って、お泊まりして
メールはしないけど文通して

後悔はあんまりないけど
管に繋がれて死ぬのは
らしくないよね

もし、家に帰れたら
俺の出番じゃないか
医者も看護師も介入しにくい
生活が待ってる

サバ寿司食って
スイカ食って
大好きな「とんでん」行って
パーティしようよ

もう少しだけ、俺と遊ぼうぜ。
最期に、少しだけ「生きててよかった」って世界を見せるから。
これから月1で帰るから、元気になってねー!!

今日の押し付けの一曲
「浪花節だよ人生は」 細川たかし
義理と人情

※ 物語はフィクションです。用法・用量を守って正しくお読みください。
 読み込みすぎると、一般的な価値観、常識から逸脱する可能性があります。

Text by : Dyson Daigo

特別養護老人ホーム職員 & LOVE AMAプロジェクトリーダー
真面目と不真面目のギャップが病的な36歳
http://www.love-ama.com

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