『移ミン、難ミン、地球ミン(中編)』:フィンランド子育てエアライン008
[連載] フィンランド子育てエアライン008
モイ!
私の住むフィンランド南部は、連日20℃を超える天気のいい日が続いています。
こういうときフィンランド人に「晴れが続いて気持ちいいね」と言うと、「6月の夏至祭の頃はまたダウンコートが必要になるんだよ」なんて、悲観的(厭世的?自嘲的?)なジョークが返ってきます。
それはさておき、前回、友人のナディアをご紹介しました。
夫と共に子ども4人を連れてシリアから逃れ、フィンランドで5人目を授かりポルヴォーで家庭を築いている女性です。彼らは母国シリアで迫害を受けた、もしくは受けるおそれがあってフィンランドに逃れてきた難民です。
旦那さんは現在フィンランドから補助を受けながらフィンランド語を学び、職につく準備をしているところです。平日の夜は、仲間と集まってスポーツを楽しんだりしています。子どもが大好きで、「10人は欲しい!」と言ってナディアを仰天させていました。(シリアでは男性は女性二人と結婚できるらしい)
ナディアは日中は家で一番下の子と過ごし、家事全般をこなします。大きい子どもたちは学校や保育園に通っています。ナディアに「フィンランド語学校に行かないのか」と聞きましたが、子どもを指さして「行けないわ」とキッパリ言われてしまいました。もちろん趣味でスポーツをする時間もありません。
男性が働き、女性が子育てや家事をするのがシリアの文化で、それはフィンランドにいても変わらないのでした。
ある日、ナディアの家を尋ねると、親戚家族が遊びに来ていました。父、母、子ども2人の4人家族です。
お母さんはまだ21才で、髪もブロンドに染めて、大学生のような雰囲気。フィンランドでは美容師になるために学校に通っているとのこと。フィンランド語が話せて、英語を勉強中。15才で結婚し、16才で第一子を授かったそうです。ナディアのように子育てをしていますが、フィンランドでは若い学生。もう子どもは欲しくないと、周りのフィンランド人の友だちのように自分の人生を楽しみたいのだそうです。
彼女の旦那さんはバスドライバーをしているそうです。
彼は英語が堪能で、出会ってすぐの私たちに、シリアであった出来事を苦い表情で語りました。
彼はシリアの田舎の方に住んでいました。ある日、仕事に出ていたところ、彼のお母さんから電話がかかってきました。「警察があんたを探してるから、家に帰ってくるな」と言ったそうです。
それ以来お母さんとは会わないまま。
首都に逃れましたが、物価が高いし仕事が無いしで、国を出ることを決めたそうです。
私は話を聞きながら自分の家族に置き換えて考えようとしてみましたが、いったいどんな緊迫した状況でどんな思いで国を出たのか、想像することができませんでした。
他のシリア難民の家族にも会いました。
姉妹のように見える大きな娘がいる若いお母さん。
シリアにいる次男の写真を見せてくれた年老いたお母さん。
みんなケータイでシリアに残っている親戚や家族と電話をします。見ていると音声チャット?も利用率が高いようでした。
次にいつ会えるのか分からない家族との通信。
シリアは果物がたくさんあってそれはそれは美味しくて…という話になたったとき、ナディアの旦那さんが「いつかシリアに遊びに来てよ!今は危ないけどね」と言いました。
泣きそうになった。
いつか互いの国を訪れることができたら、と思うと。
私も自分の国が好きだから、すてきなところをたくさん紹介したい。
私はただただ、日本にいる自分の家族に思いを馳せ、そしてナディア家族との出会いに感謝をするばかりでした。
次回、後編へ続きます。
ウブマグの記事を書くときは湿っぽい気分になりがちやけど、
次回はぱぱ~んと明るめに書きたい(希望)。
では、ナハダーン!
Text by : Haruka
2012年フィンランドに8ヶ月間留学し、2015年に移住
2児の子育て、デザイン、写真、買い付け、ガイド、国際交流のお手伝いなど
できることは何でもしまっせ
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