MENU

DJ NOAH VADER:My Music life 016  Rhye – “The Fall”

My Music Life 016

皆さん、こんにちは。

ライス兄弟の弟、秋といえば食欲の秋と答える方のノアです。
秋は色々美味しい食べ物が旬を迎えますよね。私はその中でもイクラが好きです。ちょうど秋になると産卵のために川を上ってくるらしいです。
なので、私は毎年晩夏になると北海道に行き、1キロのイクラをまとめ買いして、京都まで郵送して、自宅にて小分けして冷凍するのです。そうするとイクラが年中食べれる。
ただね、さすがにイクラも多く食べるとさすがに飽きるんですよね。
人間って贅沢な生き物だわ。

さて、音楽の話をしましょうか。

私、気付いたんですが、ここ3回くらい立て続けに邦楽をご紹介していました。
「私の連載では貴重な邦楽をご紹介!」とかほざいてたのに、全然貴重でもなかった。

いかん、いかんぞ!(別にいかんくないけど)

洋楽はどこにいった!しかもここ最近曲調もアップ目じゃないか!秋の夜長に合う曲はないのか!

ふふふ。真夜中大好き人間の私はそんな曲はしこたま聴きまくってるのです。

というわけで、今週の!
DJ NOAH VADER’s RECOMMEND!!!

Rhye – The Fall

………ハッ!ウトウトしてはいかん!
あまりにも心地良すぎて、つい!

ステップを刻むように規律正しいピアノのメロディー、哀愁とエロティシズムを漂わせる高音かつハスキーがかったヴォーカル、それでいて少しのポジティブさを表現することで哀愁だけでなく、軽やかさを感じとれるパーカッション。

んー、良いですね。
今夜はぐっすり寝れそうです。

このアーティスト、名前の読み方は「ライ」。
アメリカのロサンゼルスを拠点に活動するデュオグループです。
もともと、それぞれ個別に音楽活動を開始していたのですが、ある時一方がもう一方に仕事の依頼をしたことがキッカケに意気投合して、Rhyeを結成。2012年にデビューシングル”Open”を、その後この曲を発表して大反響を得ます。
この2曲も収録されているデビューアルバム「Woman」
第2回でご紹介したHONNEも、自分達の好きな曲としてライのこの曲を推すほど、多方面から関心が寄せられています。

基本として、このセクシーでデビューアルバムのタイトルが物語るように女性的な、いや今の時代の言い方で言えば、性すらも意識させないジェンダーフリーな、とでも言いましょうか、そんなヴォーカルを軸に、時にジャジーで時に濃厚なほどにソウルフルな楽曲が彼らのスタイルと言えるでしょう。

しかし、同じアルバムの他の曲を聞いてみたら、ディスコ、ハウス、ブラックミュージックといった様々なジャンルから抽出したエッセンスが取り入れられて、それを混ぜた上でさらに蒸留させることで透き通った音楽性をしっかりとキープしている。そんな丁寧に作られたと分かる曲が多い印象です。

例えるならブランデーでしょうかね。

この曲もとても洗練された、「ラブソング」になっています。
曲の題名”The Fall(秋)”、リリックの”Don’t run away”、加えてMVから考察するに、人生が一番燃えててキラキラしてた頃をよく「人生の春」と表現するならば、この曲はそのキラキラがその姿を消して、衰退していき、愛や情熱が自分から遠ざかっていくことへの戸惑いや切なさを表現しようとする曲だと分かります。
MVの中でも、男性は事あるごとにいかにも危うさを含まれた青春真っ只中の女の子の幻を見ます。しかし、幻から目が覚めて本当の妻と、幻のようにはしゃごうとしても、妻は冷たくあしらうのです。この奥さん、顔からしてキツそうですもんね。
こうした、情熱を持っていた過去から変わりたくない、しかし変わらざるを得ない。そうした経年による変化がよく読み取れるMVになっているのです。

ここでもう1つ考えずにいられないことがあります。この曲はどの立場、どちらの性から歌われているのか。
上記の通り、MVでは主人公は男性でした。
しかし声はフェミニンな印象を受けます。そしてリリックはどちらとも捉えることが出来ると思います。

実際、Rhyeがデビューした際、多くの音楽評論家からは「中性的、両性具有的」と評されていました。

この曲に限らず、彼ら自身の音楽性についてメンバーの1人、マイケル・ミロシュは過去のインタビューにてこう語っています。

「僕の曲は、愛についてのものが多い。そうなると、性やセクシュアリティというのは欠かせないテーマだと思う。それらは愛と自然に、そして必然的に結びついているものだからね。

(中略)

(ジェンダーによる役割設定について)筋肉をつけて強くならなければというストレスや考えは、男性が持ちやすいものだと思うね。それは文化的なものだと思うけど、僕は、それは必要なことだとは思わない。筋肉がついていてもいなくても、強くても弱くても、そんなのどうでもいいこと。世のなかにはもっと大切なことがあって、男性として自分が愛するひとにとって良い存在であることのほうがよほど重要なことだと思う。お互いに戦わないことのほうが大切なのに、あえて線を引いて違いを深めることによって戦いを起きやすくしている。性別に限らず、国籍、宗教、そういったものすべての境界線を越えて、僕たちはみんな一緒に動くべきなんだ。それがいま起こっている深刻な問題の解決策なんじゃないかな。それができれば、そういった問題が生まれさえしないのかもしれないしね。」

私はこの上の言葉を世の中に広く知ってもらいたいために、今回Rhyeをご紹介したとも言えます。

ラブソングとは、どうしても誰から誰への歌、一定の立場からの発信なのだと捉えられることが多いでしょう。
そしてそれは歌い手の性にも大きく影響されるはずです。

Rhyeはデビュー当時、(動機や意図は違うけど)素性を発表せずに楽曲をリリースしていました。おそらくその事も「中性的」と評される一因になっているのでしょう。

しかし、福祉や社会問題に明るい人でなくても、現代社会における性は多種多様なものとして認識されるようになっています。

しかし元来愛とは多様なものでした。恋愛に限れば同性愛などは厳しい抑圧にさらされていましたが、愛は恋人同士の恋愛だけでなく、母性愛、父性愛、兄弟愛、家族愛だけでなく隣人愛もあります。また、他の人に向けられたものだけでなく、ペットや草木などの自然、愛用品、はたまた外部に対してではなく、自分自身に向けられる自己愛も愛の立派な形と言えるでしょう。

つまり愛の多様性は、現代社会を象徴する現象では決してなく、遥か昔から多様であり、中性的であり、両性具有的であったのです。

しかし、このアーティストが多方面で高い評価を受けた事は、とても現代社会がどの位置にあるのかを、とても良く表しています。

なぜならRhyeの登場がたった半世紀早くても、きっと世の中からは「ホモの聴く音楽」と言った聞くに耐えない醜い言葉が投げかけられる事が容易に想像出来るはずです。

Rhyeを始め、近年活躍しているフェミニンであり、ジェンダーフリー的な音楽性を打ち出すアーティストは、現代だからこそ活躍の場を獲得出来るのであり、同時に現代社会が彼らを生み出したとも言えるのです。

社会が多様になれば音楽も多様になる。とても良い例だと思います。

Rhyeは今後もその洗練された音楽性と思想をもって活躍するでしょう。

今年2018年もセカンド・アルバムをリリースしました。

ということで、最後にセカンド・アルバムからもう一曲ご紹介。

DJ NOAH VADER’s RECOMMEND Part 2!!!

Rhye – “Summer Days (Roosevelt Remix)”

ドイツのエレクトロポップアーティスト、Rooseveltによるリミックス。原曲のアトモスフィアは保ちつつも、よりダンサブルになるように編曲がされています。

何よりMVが「Rhyeとは」をよく表している。監督グッジョブ。

では、今回はこの辺で。

それでは皆さん、良い音楽生活を!

Text by : ライス趙 ノア