MENU

家なし家族のミラクルハッピーホーム:さとうみくる voL.0 ホームレス支援の現場から

voL.0  「ホームレス支援の現場から」  さとうみくる

 

 

 

 

ちょっとした偶然が重なって思いもよらぬ方向に人生がぐぐっと動くことが度々ある。
 
 

 

 

きっと、毎日泣きながらスーツを着て、
必死に就活していた学生時代の私に

「あなたは5年後、縁もゆかりもない土地に移住して、
ホームレスのおいちゃん達と愉快に暮らすことになるよ」

といっても、
てんで相手にしなかっただろう。
 
 

 

でも、それが今の私の人生だ。

 

 

いま、私はとある地方都市のホームレス及び
生活困窮者の支援団体の職員として働いている。

私自身は生まれも育ちも横浜で、
大学卒業後は東京の不動産業界の界隈で働いていた。

けれども、
ひょんなことからホームレス支援を行っているNPOに出会い、
ガツンと殴られるような衝撃を受けて、
その勢いで移住して転職して、今年でもう4年目になる。
 
 

 

移住前はホームレス支援どころか、
福祉の現場も未経験だったから、
私はとにかく不安でいっぱいだった。

私が配属されたのは30名のおいちゃん達が暮らしている
無料低額宿泊施設である。

ここでは元ホームレスの方や出所者の方など、
ひとり暮らしをするのは厳しいけれども、
見守りがあれば地域で暮らすことができるという方々が生活している。

 

どんな荒くれものがいるのだろう……

きつくて辛くて苦しい現場に違いない……

 

そんな勝手なイメージを元に、
今思えば身も心もがっちがちに緊張した状態でやってきた。
 
 

 

ところがどっこい、
私が出会ったのは世にも個性的で
チャーミングなおいちゃん達であった。

人懐っこく世話焼きなおいちゃん、
愛嬌たっぷりに我が道を突っ走るおいちゃん、
口は悪いのにどこか憎めないおいちゃん……

自由なおいちゃん達が巻き起こす
予想外の出来事の連続に翻弄されつつも、
彼らと共に笑ったり泣いたり悩んだりと、
なんだかんだで毎日愉快に楽しく過ごさせてもらっている。
 
 

 

一緒に過ごす時間が長くなるにつれ、最近では

「あれ、私たちなんだか家族っぽいんじゃない?」

と思うような瞬間も増えた。

そもそも日本の近代的な核家族の在り方に疑問を持っていて、
「家族ってなんだろう?」
ということをずっと考えて生きてきた私にとって、
おいちゃん達との出会いと交流は
間違いなくひとつの大きな転換点となっている。
 
 

 

何より人生の山を越え、谷を越え、
それでも生き抜いてきたおいちゃん達から学ぶことはたくさん……!

のほほんとしたおいちゃん達の背後に
壮絶な人生が見え隠れするとき、
目の前の何気ない日常も実は奇跡なんじゃないかと思うこともしばしばだ。

 

今回の連載では、そんな個性豊かなおいちゃん達との日常を通じて
私が感じたことや考えたことを徒然なるままに綴れればと思っている。
 
 

 

ようこそ、家無し家族のミラクルハッピーホームへ。
これからどうぞ宜しくお願いします。
 
 

 

Text by Mikuru Sato

元ホームレスの個性豊かなおいちゃん達が暮らすミラクルハッピーホームの生活相談員。
血の繋がらない家族をつくるために日々奮闘中。