【CRFイベントレポ】Talk Session① はっぴーの家ろっけん 首藤義敬さん
── 2019年2月15日、表参道ヒルズ。
全国各地から「地域共生社会」につながる個性的なパイオニアたちが集まり
大好評を博したCommunity Roots Forum 〜地域共生社会実現フォーラム〜。
なんと今回、そのトークの内容を6日間で一挙大公開します!
地域の中で、支え手、受け手、世代、分野といった垣根を越えて、
あらゆる立場の人々が自然と集い、住みよい場所となる「地域共生社会」。
その「自然に集う」ための、 きっかけを創る仕掛けとは?
イベントレポ第1回は、はっぴーの家ろっけん 首藤義敬さんです!
Talk Session①
株式会社Happy 代表取締役 はっぴーの家ろっけん
首藤義敬 Shutou Yoshihiro (兵庫県神戸市)
(http://y-shuto.com)
(https://www.facebook.com/rokken.happy.home/)
23歳で遊休不動産の活用事業や神戸市長田区を中心に空き家再生事業を起こし、27歳の時、法人化に至る。自身の生い立ちから多世代のシェアで暮らす昔の日本のライフスタイルを作ることが少子高齢化問題を解決する一つの方法になると気づき、「ハッピーの家プロジェクト」を指導。「遠くのシンセキより近くの他人」の価値を見直すことで、子育ても介護も若者も暮らしが豊かになるという仮説を検証中。
多世代型介護付きシェアハウス『はっぴーの家ろっけん』は0歳から100歳超えまで国籍問わず週に約200人が集うカオスの極み。
この中で一番素人!
はじめまして。実は今すごく圧倒されています。このイベントを運営するUbdobeの方に誘ってもらって来てるんですけど、もっとゆるい会を想像してたんですけど……。今すごく帰りたいです、スライドも恥ずかしいから出したくない。でもここまで来たからには、頑張ってやってきます。
神戸の新長田というところから来ました。阪神淡路大震災の被害が激しかったところで、僕の家のまわりは全部焼けました。そんなエリアです。
もともと僕には大家族で暮らした経験があって、みんなで住んでいたから助かったという思い出があるんですね。お互いに依存し合うことは悪いことではないなと考えています。
不動産業で空き家の再生事業の仕事をバリバリとしているときに、子育てとうちのじいちゃん・ばあちゃんの介護が重なって、これ一緒にするの無理やなと思ったんです。じゃあまちの人と一緒にシェアしようって、新規の介護事業をはじめました。
だからスライドの(4択問題の)答えは「運転免許」です。奥さんはイラストレーターなので、この世界ではほんとうの素人です。この会場で一番素人かもしれません。温かい目で見てください、ほんまに。
『はっぴーの家ろっけん』はどんなところかなと考えながら来たんですが、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)みたいなところちゃうかなと。いろんなキャラクターが節操なくいて、ごちゃまぜになってる。
くくりとしては、サービス付き高齢者向け住宅です。このあいだは国連の人が見学に来たし、環境省のポスターにも『ろっけん』のみんなが写ってるんです。夏は涼しい格好しようやって。なんか勘違いみたい話ですよね。
広告求人費0円
僕らの住む長田という地域は、シャッター商店街も多くて、少子高齢化の最たるエリア。行政のひとからしたら「おかかえ」の地域なんです。
ただ、『ろっけん』では「おかあさんがちょっと子ども見といてー。美容室行ってくるから」って子ども預けて出かけていくんですね。そいで、おじいちゃんが子どもと遊んでるんです。血はつながってないですよ。
データ上で見ると子どもが少ない最下位のエリアだったんですけど、最近は出産ラッシュ。神戸市の人もビックリしてるし、よそから来る人は、もともと子どもが多いエリアだと思ってる。これも勘違いですね。
現在『ろっけん』のリビングには、週に200人のひとがやって来ます。
ここで介護事業をはじめるときに、採用難の業界だよという話をあちこちで聞きました。じゃあ1人のプロを巻き込むより100人の素人を集めようってワークショップを開きました。まちの人たちのアイデアを聞いて、事業計画をたてたんです。まちづくりの関係者や医療関係者だけじゃなく、その辺を歩いてるおかあさんや子ども、おばあちゃん、おじいちゃんを捕まえて参加してもらいました。
1年かけて、まちのいろんな場所でアイデアを出してもらいました。僕は多動なところがあるんで、やる言うて結局やらんかったやん、ってことが起きる。だからこのアイデアたちを絶対実現させようと「ワークショップやるやる詐欺からの脱却」を宣言。ふり返って集計してみたら98%実現させていました。この割合がすごいんじゃなくて、誰の意見かわかっているから、やらなしゃーないって。そうやってまちの人を巻き込みつつ、僕もしっかりと巻き込まれて動いてきました。
求人にお金がかかると聞いていたので、コミュニティをつくってしまえ! と思ったんです。そしたら求人広告費0円です。地域のためにコミュニティつくったら、会社のリスクも軽減したんですよ。これも狙ってやったわけではないんですが、その分のお金をスタッフの研修費にまわすことができています。
アタマの中の「当たり前」をリノベーション
ろっけんの家は、ホームページもチラシも一切ありません。あるのはFacebookページだけ。「サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)でこんなイベントやります」ってイベントページをつくったら、全国から400人も来るんです。多分、準備段階からのプロセスをずっと見せていくことで、ファンができるんじゃないかなと。
ここにいる方の紹介をすこし。この方はレビー小体型認知症(https://ja.wikipedia.org/wiki/レビー小体型認知症)をもつおばあちゃん。「あそこに3人立ってる」って幻覚が見えちゃんです。前の施設にいたときは、なるべく刺激を少なくして過ごしていたそうです。だけど、いつも「3人立ってる」って言うなら、30人見したれっていうのが僕らのケアです。そしたらこの日、おばあちゃんはゆっくり眠れたんです。
少々気性の荒いおばあちゃんもいます。いつも怒ってる。昔、大勢いるなかでものづくりしてたという情報をゲットして。「ものつくるのが好きなんちゃう?」なんていうのをFacebookに投稿したら、「編み物をコラボレーションしたい」って他のまちのおかあさんが連絡してきたんです。そんで、実際にコラボした編み物をアップしたら、今度はそのおばあちゃんの娘さんもコメントくださって。こういう思いもよらないつながりがどんどんできていくのが、おもしろいんですよね。
僕は「こんな暮らしがあってもいいよね」っていう提案をしています。不動産業やってるっていうと、よく建物のリノベーションやるのか? って言われますけど、アタマの中の当たり前だと思いこんでいたところをリノベーションする会社やと思っています。
(スライドに家族のイメージ写真)
知ってる人がいたらごめんなさいね。これ、「大家族」「リア充」って検索したら出てきた写真です。日本って核家族社会なのに、いまだ大家族像をおしつけてくることってないですか? 僕は、そんな「家族の定義」をもリノベーションしたいと思っています。
「遠くのシンセキより、近くの他人」って言うけど、ここに写ってる人たち、ほんまに1人も血がつながってないです。言葉がわからなくても、楽しそうなんですよ。孫じゃないけど、孫みたいなんです。なんで来るのか分からないんですけどね。
違和感は3つ以上重なると、どうでもよくなる
『ろっけん』にいるのは、独居老人、シングルマザー、外国人……って一見社会的弱者とされている人たちです。僕は素人だからケアってよく分からないけど、日常の登場人物を増やしたいと思ってます。
こんなん出していいのかな……。こないだ「夜の7時からBBQできるところ探してんねんけど、お前のところしかないから今から行くわ」って連絡が来まして。どやどやと材料を持って、高齢者施設のリビングに来た人たちがいたんですね。
入居されてるおじいちゃんが最初はブチ切れてたんですが、お酒持っていったらご機嫌に「もっとやれ」ってなりました。
ここで重要なのは「十人十色の賄賂を用意して、楽しむ」です。渡して喜ばれるものは人によって違います。だから十人十色です。
実はこのおじいちゃん、要介護5だったんです。見えないでしょ? しかもうちはリハビリスタッフいないんですよ。最終的にどうなったかというと……踊り出したんですね。そして、自分の車椅子に子どもを乗せて、完全に車椅子の使い方を間違ってる! 要介護5から回復し過ぎている! これには僕らもビックリでした。
長田というエリアは、外国人が多くてガラが悪いとも言われていて。だけど、『ろっけん』のリビングに来て一緒にごはんを食べれば「Oh! ダイバーシティ」になるんです。
人が多くて、喧嘩するおじいちゃんとおばあちゃんもいて、子どもが走りまわっていて、外国人がいてってなると、もうどうでもよくなるんですよ。僕らは素人なんで、この組み合わせを管理してしまうのは無理なんです。「違和感は3つ以上重なると、どうでもよくなる」っていうのが、ほんまのダイバーシティなんじゃないかと思います。
みんなのためにやらない
今取り組んでいるもので、「新長田アートマフィア」(https://shinnagataartmafia.wixsite.com/geitose/geitose)というものがあります。介護施設や病院、設計事務所やお店などの場を持っているひとに、使っていない時間アーティストが使えるようにしてくださいというプロジェクト。助成金をもらわずにアートフェスを開催できました。
夕方6時から朝の6時まで眠っている空間ってたくさんあると思うんですよね。そこを使わせてもらおうという発想です。
メンバーのうち、半分は福祉事業者。残りはまったく異業種の人たちです。ガラの悪い写真ですみません……。この中にはお医者さんも写っています。
まちの人たちとプロジェクトを進めていく時に、うまくいくのって「みんなのためにやらない」ことじゃないかと思うんです。明確なこの人のため! っていうのがあると、その人が喜んで、結果みんなが喜ぶことになるんじゃないかと。
サ高住のなかに、訪問介護ステーションと訪問看護ステーションを置いたんです。それも、家族みたいにして一緒にいるおじいちゃん・おばあちゃんが状態悪くなったときに、病院で死んでくださいって言いたくない。最期まで一緒にいたいからです。
そうやって、状態やニーズに合わせてしくみや制度を変えていくことで、ろっけんの家も変化していく。「サ高住」にこだわってるわけではないんです。眼の前の誰かを喜ばせたいって、それだけなんです。
ライティング : 山本 梓
次回Talk Session②は藤岡聡子さん!
どうぞお楽しみに!!!
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