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【CRFイベントレポ】Talk Session④ 久田亮平さん

── 2019年2月15日、表参道ヒルズ。
 

 
全国各地から「地域共生社会」につながる個性的なパイオニアたちが集まり
大好評を博したCommunity Roots Forum 〜地域共生社会実現フォーラム〜。
 
なんと今回、そのトークの内容を6日間で一挙大公開します!
 
地域の中で、支え手、受け手、世代、分野といった垣根を越えて、
あらゆる立場の人々が自然と集い、住みよい場所となる「地域共生社会」。
その「自然に集う」ための、 きっかけを創る仕掛けとは?

イベントレポ第4回は、久田亮平さんです!
 
 

Talk Session④
サンフェイス グループ代表
久田亮平 Hisada Ryohei
(大阪府大阪市)
http://sunface.or.jp/index2.php

「夢」と「可能性」をキーワードに障がい児とその家族の支援を行う。株式会社とNPO両方の法人格を持ち、株式枠ではヘルパーステーション/児童デイサービス/ケアホーム/cafeや音楽スタジオの運営などを行う。NPO法人として音楽教室やダンス教室、ブラジリアン柔術教室を始めさまざまな教室の実施、月に一度の障がい児者の余暇支援イベントの開催、障がいのある子どもたちとそのきょうだい児のフォローを考えた「きょうだいの会」、地域の小中学校向けに発達障がいの理解のための訪問活動を行っている。その他、『SUNZO DESIGN PROJECT』(http://sunface.or.jp/sunzo/index.php)と『B.S.C Rainbow Works』(http://bsc-rw.com)などのブランドを持ち、全国の福祉作業所へプロダクトの提案・販売・プロモーションを行う。福祉の活動の傍ら個人としては、オリックス・バッファローズの応援ソング「SKY」を歌うバンドMEGASTOPPERのサポートドラムをつとめる。ブラジリアン柔術も紫帯(インストラクター)の腕前。
現在、「すべての子どもたちに夢は必要だっ!!」をキャッチフレーズに日々、奔走中!!

株式会社とNPOの両輪

 大阪市の生野区から来ました、サンフェイスの久田亮平と申します。僕、めちゃくちゃ人見知りで、人と目が合わせるのも難しいんですが、決して嫌というわけじゃないので。ご勘弁を。
 僕は主に、障がい児の支援をしていますが、ここにおられるみなさんの高齢者福祉の分野にもつながりがあるように、がんばって喋っていきたいと思います。よろしくお願いします。
(スクリーン上のスライドが動かず)
 あれ? さっきめっちゃ調子よかったのにな……僕、こういうの呼ぶ男なんですよ。貝の入った味噌汁とか、周りはみんな大丈夫なのに、俺だけ必ず「ジャリ」って砂入ってたりするんすよ。(会場大爆笑)
……あ、来ましたね。

 株式会社サンフェイスとNPO法人サンフェイスをやっておりまして、グループ代表というカタチで活動させていただいています。
 株式会社のほうは、ヘルパー派遣とデイサービス、放課後デイサービスを3つやっています。1つ目は小学校1〜6年生が通う『トーテム』。2つ目は『ティピ』という中高生を対象にした、主に就労向けのものです。さいごの3つ目が小学生から高校生までの広い年齢が集まる『ALO』(http://sunface.or.jp/alo/index.php)。これらを運営しています。
 NPOのほうは、僕らの「すべての子どもたちに夢は必要だ!!」という思いをカタチにする事業です。僕自身、5人きょうだいの長男で三番目の妹と末っ子が障がいをもっているので、悩んだり壁にぶつかったときに相談する相手をつくりたいと「きょうだいの会」(http://sunface.or.jp/family/index.php)というのをやっています。
 時間がないのでどんどん行きましょう。

地域共生社会=インクルーシブ教育?

 そもそも、「なんで俺は呼ばれたんや?」ということですよ。今回のテーマ「地域共生社会」ってなんやねん? 僕は全然分かってなかったので、調べてみたんです。厚生労働省のサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000184346.html)には、ムズカシイこと書いてありました、あとで読んでください。

 でもこのなかに「我が事〜誰もが住み慣れた地域で生きがいをもって共に支え合う社会」って書いてあって、それって福祉・教育の分野での「インクルーシブ教育」に似とるかもと思ったわけです。
 インクルーシブ教育とは、障がい児と健常者が共に学ぶこと。かつてはインテグレーション教育と言って、なんの理解・サポートもないままに、ただ場所だけを一緒にするという方針だったために、失敗した過去があります。ほかの生徒の負担が大きすぎて。
 それって「学校の教室=地域」に置き換えても同じこと起こるんちゃうかなと思ったんです。
 インクルーシブ教育に必要なものは、正しい理解。知ってもらうってことです。なんで障がいのある子らに興味・関心がないかって言ったら、知らないからです。高齢者福祉も同じですよね。こんなことに困ってます。高齢者がこれだけいますよ! まずは、知ってもらうことから。
 ということで、僕らは大阪府内の小中学校に「発達障がいってなあに?」という訪問授業をしています。
 発達障がいの子らがクラスのなかに戻ってくるということで、いま先生たちは勉強していろいろ知ってるんですが、いじめなどの問題は子どもたち同士のなかで起こる。そのために僕らは子どもらに伝える必要があると考え、小中学校で授業をやっています。「障がいがどうこうと言う話もそうなんですが、「共感」を意味するエンパシー教育。ここを重要視してをやっていて、一回その子が何を考えているのか、時間をとって考えるだけでもかなり変わってくる。
 この訪問授業を続けていると、子どもらが先生を注意するようになるんですよ。僕らは発達障がいの子供達に有効な上に、みんながわかりやすくなるポイントに「視覚的、具体的、肯定的」っていうのを言っているんです。僕らが帰った後でも子どもたちが「先生、いまのは具体的じゃないです!」なんて言ってるみたいで。て。
 あと、これは先生から聞いたんですが「将来サンフェイスみたいなところで働くにはどうしたらいいですか?」って言う子がいるそうです。僕らの訪問授業で、福祉に興味をもつ子どもが大阪にどんどん増えてるって。福祉の未来は明るいでしょ。

地域の人が集まるしくみ

 NPOの活動に話を戻しますね。音楽スタジオとたこ焼き屋をやっています。大阪の事業所はみんなたこ焼き屋やらなあかんわけではないですよ?
 地域の人が集まるしくみをつくっただけです。
たこ焼き屋の奥に『studio GREENGREEN』という音楽スタジオがあって、さらにその奥には障がいをもつ子らが通ってくるデイサービスがある。福祉事業所って地域に敬遠されがちなんですが、たこ焼き屋・リハーサルスタジオがメインの通り沿いにあるので、近所の小学生がギター弾きに来たり、高校生がたこ焼き買いに来たり。たまり場になっているので、毎日来るでしょ。そうすると、デイサービスに来る子らとも顔見知りになる。「この裏に何があるの?」って話かけたり、「こうやんねんで」と買い物を手伝ったり。面白いコミュニティーができてるんです。
 ブラジリアン柔術の道場『SOLROSTO』もやっています。ブラジリアン柔術連盟の加盟団体で、障がいをもつ子に教えるサポートクラスがあるのは、日本で唯一です。ただ、障害のある人たちの正式な試合がなくて発表の場が無いんですよね。だから自分たちで大会をやっています。毎回7団体くらい参加して。一般の柔術家のごっつい猛者たちと同じ場所で道場の子らもエキシビジョンマッチ参加するんですよ。感動しますよ。6月にまた大会をやりますので、ぜひ来てください。

福祉×ブランドをプロデュース

 福祉作業所のつくったモノのプロデュースの仕事もしています。国産靴下の製造時に出る端切れを使って指編みをしたラグマット「SOCKMAT」。昔から福祉作業所でも作っていたんですが、「色味が悪いんですよ」とアドバイスをくれた大阪の雑貨屋『Down to Earth』(http://downto-earth.com)さんとコラボレーションして商品化しました。いまでは、全国の雑貨屋さんや、某有名アウトドアブランドの試着室にこのSOCKMAT置いてあります。
『RE.ACT LEATHER WORKS』(https://react.thebase.in)という皮製品のブランドさんでは、刺し子のポーチをつくりました。国内いろんなところで取り扱っています。
『TSUNOKAWA FARM』(https://detourlife.stores.jp)さんでは、背負子(しょいこ)紐を使ったカメラストラップを。背負子をつくっている作業所とのコラボレーションです。
 あと、『エマート』(http://aimant-e.com)という鞄の卸売メーカーとさおり織りをあしらったトートバッグを販売しました。これ、約2か月で2000個近く売れました。この商品のネームについているQRコードを読むと、全国のさおり織りを体験できる福祉作業所が出てくるんです。「家の近くでもやってるんや」とか「ここでも買えるんやな」と、まったく福祉に興味のなかった人たちと作業所をつなぐしくみになっています。
 きっちりターゲットを絞り込んだ事業もやっています。フィッシング・アパレルブランド『NEW CURRENT WORKS』(http://current.jpn.com)では、バスフィッシングと福祉をかけ合わせています。アウトドアブランドのALDIES(http://aldies.net/)とのコラボレーションアイテムの冒有名映画をもじった「BUSS TO THE FUTURE」のTシャツは、こないだテレビ見てたらお笑い芸人のミキの弟が着てました。フィッシングを通じてヨーロッパの人が作業所のプリントしたTシャツを着ていたり。こういうんが、作業所で働く人たちのモチベーションアップにもつながるんですよね。工賃アップよりも、まずモチベーションを上げることが大事。工賃は後からついてくると思います。
 ほんまのルアーもつくりました。塗装と組み立て以外はすべて福祉作業所で作りました。破れたボートカバーをアップサイクルしてつくったポーチを作ったり、ルアーは、海外に販売されました。
 このように、福祉をまったく意識していなかった人たちにアプローチするような取り組みをしています。

障がいは環境が生む

 まずは、知ってもらうことから。隣の人は誰か? くらいは知っておこう。興味ない人にこそ、知ってもらうきっかけをつくる。
「トントン」って肩をたたけば絶対こっち見るんです。で、そこから何回トントンするか。
 誰も損しないしくみづくり、誰もが楽しいと思えること。それを巻き込んでいくチカラが大切だと思います。
 訪問授業で子どもたちによく言うんですが、「環境が整えば、障がいって無くなるかもしれないよ」って。障がいの定義は先ず個人因子と環境因子の2つに分かれるんです。

 車椅子の人が段の上にスムーズに乗れないのが障がい。じゃスムーズに乗るには何がいる? って聞きます。

「スロープつくる」

スロープつくったらスムーズに上がれるか?

「あ、押す人が必要や!」って。

スロープだけが環境なんじゃなくて、一人ひとりみんなが環境なんやで。僕らが障害の壁になったらだめやって、伝えています。

「すべての子どもたちに、夢は必要だっ!!」

 これも同じことを言っていて、サンフェイスでは、子どもたちには絶対に「夢」が必要と信じています。その夢を見る環境は必ず周りにいる大人が作ってる。僕らはいつも関わっている子どもたちが夢見る環境をつくれているかを軸に、活動させてもらっています。

ライティング : 山本 梓

次回Talk Session⑤は田中元子さん!
どうぞお楽しみに!!!

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