岐阜県羽島郡岐南町。
青空が広がる広々とした敷地に佇むこちらの素敵な建物。
あたたかさを感じる木造と
日の当たる縁側が印象的。
みなさん、ここがなんの建物か、わかりました?
実はこちら、
医療法人かがやきさんが持つ、
医療クリニックの社屋です!!!
その名も、かがやきロッジ!
しかも、まだ全国でも珍しい総合在宅医療クリニックを行っているとのこと。
・・・でも、ちょっと矛盾を感じませんか?
在宅医療ということは
本来患者さんが「来る」のではなく
医療スタッフが「行く」診療を行なっているはずなのに、
なぜこんな立派な建物に?
・・・てゆうかそもそも本当に、ここ、医療クリニックなの?
早くもハテナがいっぱいの記者にお話をしてくださったのは、医療法人かがやき 理事長 市橋亮一先生です。
こんにちは!ウブマグ記者のしょこと申します!よろしくお願いします!
こんにちは。ここで医師をしております。市橋です。よろしくお願いします!
建物の中も、お洒落で開放的で素晴らしいですね!!!
え?いいんですか?てか、先生がつけちゃうんですか?!
(・・・なんか、私が思っていた「お医者さん像」と全然違うな・・・)
▲ウブマグ記者の「お医者さん像」
▲目の前の「お医者さん」
そもそも、在宅医療とは?そしてこの建物の存在の真相は?
在宅医療をされているということですが、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?
入院が困難な患者さんの自宅もしくは施設などに、定期的に訪問し、診察や検査、薬の処方、予防的な指導などを行っています。
▲一階の広いリビングの奥には、医療用品を管理するスペースやオフィスが。
あ!ごめんなさいなんでもないです!
具体的には、どんな方の元へ行かれるんですか?
脳梗塞などで、身体機能が低下した方や神経難病や肺疾患などで、呼吸器管理を必要とする方、外来でがん治療を行っている方、在宅において医療的ケアが必要な小児の方、認知症の方などを支援しています。基本的には24時間365日お電話を受け付けて駆けつけます。
・・・あの。本来患者さんが「来る」のではなく医療スタッフが「行く」診療を行なっているはずなのに、なぜこんな立派な建物を建てられたんですか?
ふふふ。そうですよね。この社屋は、2018年の11月に新しく作ったんですが、私たちだけのものでなく、地域のためのものでありたいと考え、設計しました。ここは、地元の方々が気軽に立ち寄れる「町の保健室」「居場所」であり、多職種のひとが相談に来られる「相談室」であり、在宅医療の普及や教育を発信する「情報発信基地」であり、全国各地や海外から視察や研修を受け入れる「学校」や「キャンプ場」なんです。
こんなに地域に開かれた医療施設見たことないです・・・。
耐用年数、まさかの200年?!
▲やさしい陽の光があたる玄関口。
そして、このかがやきロッジ、200年先も残るように建築されています
に、200年?!ちょっとした江戸幕府じゃないですか!
木を使っているから、時間が経つともちろん木自体は悪くはなるんだけど、設計によって、その木を全て交換できるようにしてあるんです。
年数にこだわりがあるという訳ではなく、まず単純に、長く続くものを建てた方がずっとお得だと思って。そこに気づかず60年しか持たないものに莫大なお金をかけるのと、ちょっと工夫して200年持つものを作るのだったら、完全に後者の方がいいと思うんです。
さらに、時間のスパンを長くして物事を考えると、目の前の様々なものが楽しく見えてくるんです。今そこに見える細々としたドングリの木は、200年後は大きな樫の木になっている。この庭は密林のように草が生い茂っている。今ここに通っている子どもたちがスタッフになって、さらにその孫の世代が遊びに来ている。そんな風に、ちょっとワクワクするような未来を感じれる場所にしたかった。
素敵です・・・。かがやきは、ロジックとロマンが融合した建築なのですね!
代表である市橋先生を「在宅医療」の道に導いたのは、
学生時代に決めた3つの条件。
市橋先生が、在宅医療に特化した場所を作ろうと思ったのは何故なんですか?
まず、自分がやりたいことだったから。そして、誰もやらないことだったからです。
これについては、話をずっと遡ること、高校2年生の時になるんです。当時、進路を考えていた時に、僕は「自分が仕事に求めること」について、3つの条件を立てました。
①自分もみんなも幸せになること
②年をとった時に価値のある人間になること
③自分が勝った時に、相手が負けるような原理で行われていないこと
高校生にしてなんてしっかりしたこと考えてるんですか!
ちょっと変わってたんですかね(笑)でも、当時はその職業が何なのか、まではわからなかったんです。
その後、ラグビーをやっていた僕は、試合中に鎖骨を骨折しました。その時、診てくださった整形外科の先生が、夜に「鎖骨バンド」という胸につけるバンドをわざわざ家まで持って来てくれたんです。それが、当時の僕はすっごく安心して。初めて「こういう仕事もあるのか!」と気づいたんです。僕の立てた3つの条件とピッタリ重なって。そこから、医師を目指すようになりました。
なるほど!最初に見てなりたいと思ったお医者さんの仕事が、今で言う「在宅医療」だったんですね!
そうなんです!その「在宅医療」という言葉自体にたどり着くまでには、10年くらいかかったんですけどね。
「予想できる人生は、もう生きたことにする。」
▲どこからでも、人の気配を感じることができる吹き抜けと渡り廊下。
でも、お医者さんに憧れて目指されたのであれば、普通はもっとこう、お医者さんらしいお医者さん(失礼!)になるのかなぁと思うのですが。。。恐らく、在宅医療をされている方の中でも、とても珍しいことをされていますよね?
僕には、もう一つ、人生で決めていることがあるんです。
はい。それは、「予想できる人生は、もう生きたことにする。」ということです。
日本で生まれたからには、「食べていく」というのはだいたい何とかなる。ということは、日本でこうして生まれた僕は、生存ではなく、この人生生きてよかったなって思えることがゴールだと思うんです。
じゃあ自分が一回しかない人生を、どう生きたら大切に生きたと言えるんだろう?と考えた時に、いわゆる「安定」した「上手くいく」人生って、ある程度想像つくじゃないですか。医者になって、大学病院で勤めて、副院長やら院長やらになって、引退して、同窓会に行って・・・。って。もう、死ぬその瞬間までだいたい想像ついちゃう!そんなの、面白みに欠けるじゃないですか!!!
だから、迷った時には、「予測できない方」を選ぶようにしてるんです。その方が、楽しいし、新しい価値を生み出せますからね。
在宅医療なら「マイナスをプラス」にできる。
▲見るからに居心地の良さそうな小上がりスペース。
病院って、元々はマイナスをゼロにする仕事なんですけど。僕はそうじゃなくて、その人が病気というものを持っていながらも、その人がそれに邪魔されることなく、やりたいことをやれるような。マイナスをプラスにできるようなことを、医療というパワフルなツールを使って実現したいんです。病院では、ある程度の日数が過ぎたら退院させなきゃいけないけど、在宅であれば、最後までその人に寄り添って、自由にサービスを提供することができる。だから、在宅医療が好きなんです。
なるほど!かがやきは、常識をぶち破りながら、医療というツールのさらなる可能性に挑戦されているんですね。
「最初は小さな社屋で在宅医療をされていた」と聞いていますが、このかがやきロッヂはどのようにできあがっていったんですか?
単純にスタッフが増えて前の社屋が手狭になったので、新しく社屋が作りたかったんです。でも、ただの社屋を作るんだったら、もっと、地域に喜ばれる、そして地域に今までなかったものを作りたかった。
はい。ここを作るにあたり、まず僕たちは、地域コミュニティとデザインのファシリテーターを入れました。普通、社屋をつくるときは、最初に建築家を頼むと思うんですけど、僕たちはその前に、概念から考えたくて。
ファシリテーター・・・って、職業としてはあまり想像つかないのですが・・・どうやって探すのですか?
「居場所 デザイン ファシリテーター」ってGoogleで検索して、最初に見つかった方に声をかけました。(笑)
便利な世の中ですよね(笑)最初の1年はそのファシリテーターの方と、医療やコミュニティについての「概念」について議論しました。そして次の1年は、その概念に沿って、何が必要なのか、つまり「ロジカル」を考えた。そこから建築して、完成までに丸3年かかったんです。
3年ってとんでもなく長いですけど、その流れを聞いてこの出来栄えを見ると納得です。。。
さらに、かがやきには「プロデューサー」という、他の医療現場では考えられない職種の方がいらっしゃいますね。
はい。地域とのコミュニティ作りや企業との連携は、そのプロデューサーがやってくれています。やここは医療だけの施設じゃないので。医療をベースにして、生活や福祉、教育、幸せを考えて、「今」を見るだけじゃなくて「未来」を作っていかなきゃいけない。「今」目の前にいるの患者さんは僕たちが見て、プロデューサーは「未来」を担当して考えてくれてるんです。
僕は医療のプロですが、同じようにデザインのプロやコミュニティ作りのプロ、栄養のプロや教育のプロなど、たくさんの分野のプロが集まって、このかがやきはできています。
なるほどです。失礼ながら、先生ってよく見る「お医者さま」のイメージとだいぶ違うな、とずっと思っていたのですが、今のお話を聞いて納得しました。先生を含め、かがやきは、医療の技術を持って新しい価値を生み出す、「クリエイティブ集団」なんですね!
ふふふ。ありがとうございます。これから200年かけて、この場所で、在宅医療を基盤に世の中になかった場所や価値が次々と生まれたら、と思います。
200年先まで、しっかり応援させていただきます!今日は本当に、ありがとうございました!!
おまけ
インタビュー後。
どーん!!!!
どどーん!!!!!!!
ちゃっかりお昼をご馳走になりました。
ここ、かがやきでは、地域の方々からいただいた食材で、
栄養士さんがご飯を作り、毎日みんなでそれを食べるのだそう。
何とも言えないこのぬくもりよ。。。
はあ。
すっかり一員になったつもりになってしまったようで、
今も記事を書きながら、
「かがやきロッジに帰りたい。。。」
と遠い目をしているウブマグ記者です。
「赴く」在宅医療の施設を「集まる」地域のコミュニティとして活用し
「人が行き交う在宅医療クリニック」として
医療と地域の間にあたたかさを生み出す、かがやきロッジ。
日本のど真ん中、岐阜県で
市橋先生率いるスーパークリエイティブチームは
今日も「医療」をツールに新しい価値を生み出しています。
皆さんもぜひ一度、足を運んでみてくださいね。
市橋先生、かがやきロッジの皆さん、
本当にありがとうございました!!!
総合在宅医療クリニックかがやき
〒501-6014 岐阜県羽島郡岐南町薬師寺
http://www.sogo-zaitaku.jp/
本日のウブマグ記者/しょこ
「こんにゃく」を最初に「こんにゃく」にして食べた人を
めちゃめちゃに尊敬してる。