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『大歓喜の産声(後編)』:ファンタジーガールのワンダーランド004

[連載] ファンタジーガールのワンダーランド004

先日、連載を見てくれた旧友から「って言うか、Akiちゃんも、結構、ファンタジーだよね〜w」と言う御指摘をいただきましたw
…さぁ、どうでしょう❤︎どう、思います?!w

ちなみに、そんなAkiちゃんとKaoちゃんは、子供の頃の容姿が瓜 二つです。

クローンみたいやわ!!w

前編に引き続き、波乱のKaoちゃん誕生話です。

出産を引き受けてくれる病院が見つかり、安堵したのも束の間。125cm、先天性骨形成不全症の私です。お腹の中のKaoちゃんは、胎児の通常の向きである縦向きになることが出来ず、生まれるまで、ずっと横向の状態で お腹に入っていました。

日に日に大きくなるお腹で、妊娠6ヶ月目には、自分の力だけでは座位が保持できなくなり、寝たきりに近い状態に。妊娠中は、リクライニングベッドとリクライニン式の車イスをレンタルして過ごしました。

そんな中、妊娠糖尿病を発病。妊娠糖尿病は、高血糖状態が続き、胎児の体重が4000g代になってしまうこともあるそうです。体が小さい私には、少しでも赤ちゃんをお腹に収めておくために、『小さく産んで大きく育てる。』が理想的でしたが、これは、大ピンチでした。
更には、Kaoちゃんが産まれた2011年は、東日本大震災の年でもあります。たくさんの方々が尊い命を喪われ、日本にとっても、私自身にとっても、本当に忘れられない記憶の年です。3月11日は、ちょうど妊娠6ヶ月目。
我が家は、東京都在住ですが、余震や福島第1原発の事故を受け、都内も しばらく混乱状態にありました。
輸送が麻痺し、妊娠糖尿病の厳しい食事制限中、思うように食材が手に入らない。又、放射能による影響で、水や食物の安全性についても情報が交錯していた時期。一時は、都内も商品棚からミネラルウォーターが消えるとう異常事態でした。妊婦としては、大きな不安の中に身を置くこととなったのです。

色々な負担が重なり、精神的にも大きなストレスを感じていました。遂に胸の骨にヒビが入り、痛みとの闘いが続くように。そして、8ヶ月目に風邪からの喘息で、呼吸不全となり緊急入院。その時は、丸一日、Kaoちゃんの胎動が感じられず、「どうか、私の赤ちゃんを助けてください。」と、心の中で真剣に祈り続けていました。
私にとっても、Kaoちゃんにとっても命懸けの闘いだったと思います。畳み掛けるような困難が、私たちの希望を根こそぎ奪おうとする。私とKaoちゃんは、一心同体で、立ち向かっていました。

2011年6月、帝王切開により、無事に出産。

出産を引き受けてくださった病院の先生方、そして支えてくれた家族と友人たちに心から感謝をしています。みなさんの支えと情熱がなければ、この命はなかったと思うと、7年が過ぎた今でも、身が震えるような想いです。
難病を生きる人たちは、出産に限らず、医療機関での受け入れ体制を整えてもらうことに、日頃から大変な苦労をしていることが少なくありません。病院によっては、普通の風邪の治療ですら受け入れてもらえないこともあります。生きようとする命に、手を差し伸べてくださる皆さんの情熱こそ、私たちの希望に繋がっていると思います。
今、私自身は、この出産を通して、良かったことにも悪かったことにも、すべてに感謝をしています。何もかも、私たち親子の絆を深めてくれた糧であり、私を母としての覚悟へ導いてくれた出来事でした。

若干、早産ではありましたが、Kaoちゃんは2498g。骨形成不全症の遺伝はありませんでした。

残念ながら、私は、全身麻酔による帝王切開だったため、Kaoちゃんが生まれた瞬間を見ていません。でも、夫から「びっくりするぐらい、デカイ声で泣いていたよ(笑)」と聞きました。それを聞いて、私は「あぁ、きっと大歓喜の産声だ。」と思ったんです。

翌日、はじめて我が子を抱きました。
小さかった…。そして、たんたんと小さな呼吸をしていました。
その瞬間に私は…
「あぁ…、…、あぁ…これが、命の普遍の尊さなんだ…。」と。
そして、思ったんです、「あぁ…そうか。これだったんだ。」と。

私が、それまで、頭で解っていたようで解っていなかった真理が、私の腕の中で小さな呼吸をしていました。

私は、自分の人生を自分らしく生きてきました。でも、時には弱い自分と向き合わなければならないことがあります。それまで、何か辛いことに直面する度に、心の奥底には『自分のことなんて大嫌いだ。』、『こんな私に何の価値があるのだ。』と思ってしまう弱い自分が、見え隠れしていました。
でも、私は生まれたばかりのKaoちゃんを抱きあげた時、私が知りたかったことの答えをはじめて本当の意味で理解できたように感じたんです。
だって、腕の中で輝いていた小さな命の『普遍の尊さ』は、きっと私の中にも存在しているはずだから。「どうして、私は今まで、自分自身の中に、今 私が腕に抱いている この尊さを見出してあげることが出来なかったんだろか?」と。思わず、ハッとしたんです。

『これからどんな事があっても、私たちは、今日のこの日、この瞬間を忘れない。』
私と彼女の命と命が、無言で交わした誓いの瞬間だったように思います。

それは、澄み渡る空の中を漂っているような、とても静かで安らかな時間でした。

ありがとう。
私は、あなたに、ずっと会いたかった。

Text by : Aki
姉妹デュオグループSAKURANBOで活動中のシンガーソングライター
ワンダーランドで就業中の車イスUserママ(先天性骨形成不全症)
https://www.facebook.com/sakuranbo.music.info/

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