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唯一無二の存在へ。パラリンピック出演の車椅子ダンサーは「社会貢献」を掲げない


ウブマグ復活!新しく始まるこちらの連載では、
NPO法人Ubdobe代表の岡が
医療福祉に関わる「おもろい人」からあんな話やこんな話を聞き出します!
記念すべき第一回のゲストは、ダンサーのかんばらけんたさんです!

 

趣味が職業に変わる、きっかけと道のり

岡 
対談第一弾のゲストは、ダンサーで友人の、かんばらけんたくんです!どうぞよろしく!早速質問なんだけど、普段仕事はなにをしているんだっけ?
かんばら 
よろしく!職業は・・・ダンサーとシステムエンジニアだね。
岡 
二足のわらじだ!
かんばら 
そうそう。昔は、ダンスのことを「趣味」って言ってたんだけど、だんだん「副業」と言うようになって、今ではダンサーとシステムエンジニアの両方を職業として答えられるようになった感じかな。
岡 
それにはなにか心境の変化があったの?
かんばら 
うーん。昔は、とてもじゃないけどダンスを職業として名乗る気はなかったんだけど、最近は第一線のプロとダンスをさせていただく機会が増えたことで、趣味でやってるってことを言い訳にして予防線を張ってるような気がしてきて・・・だから、自分に甘えないように「職業」として名乗るようになったんだよね。
かんばら 
もちろん自分よりすごいプロのダンサーさんがたくさんいる中で、それを名乗ることに若干の抵抗はあるのだけれどね。
岡 
でも、かんばらくんの存在は唯一無二だよね。世の中にダンサーってたくさんいるけれど、かんばらくんのように踊るダンサーは、かんばらくんしか観たことないもん。あれって、ジャンルとかってどういう風に考えてるの?
かんばら 
ダンスのジャンルを聞かれるとすごく困るんだよね。一応コンテンポラリーダンスって答えることもあるけれど、ブレイクダンスのイベントやサーカスのステージでも同じように踊らせてもらっているし。自分でジャンルを作っているって感覚の方が正しいかな。
岡 
今では多くの舞台で活躍するかんばらくんだけど・・・ダンサーになろうと思ったのは、いつ頃なの?
かんばら 
小さい頃は自分がダンスするなんて思ってもいなかった。けど、実はその頃から車いす上での逆立ちはできていたんだよね。というのも、昔から親にもなんでも自力でやらせてもらっていたし、家の中では這って生活していたから腕の力はすごくあって。逆立ちはそんな中で身に付けた能力を活かした、友達に見せるための必殺技だった。笑

岡 
すげー写真だな。笑
かんばら 
そのまま大人になるまで、ダンサーになりたいっていう気持ちは全くと言っていいほどなかったんだけど・・・29歳の時、ニュースでパフォーマンス専用の車椅子が紹介されてたんだよね。その車椅子がめちゃくちゃ格好良くて!その数ヶ月後に偶然SNSでパフォーマーの募集を見つけて、とっさに「乗りたい!」って思って応募した舞台が、僕の初ステージ。

岡 
うおお、かっこいい車椅子!
かんばら 
その時は、ダンスを踊りたいのではなくて、かっこいい車椅子に乗りたいっていう気持ちだったんだけど、練習中に「こんなこともできるかも」って思いついてやったのが「ろくろ」っていう技だったんだよね。


△ 車椅子の車輪の動きを利用した技「ろくろ」

かんばら 
ここから、もっとやってみたい!って気持ちが芽生えて、ワークショップに応募しまくるようになったの。で、そこからどんどん人と繋がって、徐々にステージに出る機会も増えていって、気がついたら「ダンス」っていう世界にどっぷり浸かっていた感じ。

 

「歓声で地面が揺れて産毛が震えた」リオパラリンピック閉会式。そしてTOKYO2020へ


岡 
そこから今度は、リオパラリンピックの閉会式に繋がっていったんだね。大舞台に立つ時って不安だったりするの?
かんばら  
いやー、大変だったよ。本番はステージすぐそばのスロープで待機してたんだけど。国歌が流れて、国旗が掲揚された瞬間、歓声で地面が揺れて産毛が震えたの。その瞬間「あぁ、俺は今すごいところにいるんだな」って実感したよね。
岡 
うわあ、今でも鮮明に覚えてるんだね!!
かんばら 
ただ・・・終わってから振り返ると、どの写真見ても余裕がない顔をしたり目が怖かったりしていて。もちろん形にはなったんだけど、それがすごく悔しくて。
かんばら 
そこから、ダンスを人前で踊る機会をどんどん作りはじめたの。どんなに小さな会場でも・・・例えば会議室でも、自己紹介がてら踊ったりなんかして。
岡 
俺、かんばらくんに初めて会った時に踊ってくれたのめっちゃ覚えてるよ!笑
かんばら 
そうそう、ちょうどその時の話。あと、学校での講演も年間10校くらいやったな。子ども達の前でダンスを踊ると、一気に心の距離が近くなる感じがするの。これは他のダンサーにはなかなかできない経験なので、すごくありがたかったし楽しかった。
岡 
その長い過程の中で、ダンスをやめようと思ったことはなかったの?
かんばら 
うーん・・・ないかな!というのも、半年に一度くらい意味不明な規模のオファーがくるんだよね。笑
岡 
かんばら 
武道館でパフォーマンスさせてもらうとか、月刊EXILEに載せてもらうとか、海外からオファーがくるとか。そのぶわぁーーーっと上がっていく勢いの中にいたから、やめたいと思う余裕すらなかった。
岡 
そして、今年の東京パラリンピックへの出演に繋がったわけだけど・・・その後の環境の変化はどう?
かんばら 
SNSの反響はとんでもなかったね!Twitterの出演報告へのいいねが9000件もついたし、コメントもたくさんいただいてすごく嬉しかった。
かんばら 
ただ、やっぱりマスメディア・テレビでの扱われ方はオリンピックの開会式の足元にも及ばないのが現実なんだよね。オリンピックの話は朝から晩まで放送したのに、パラリンピックの話は5分で終わり。パフォーマンスだってせっかくあれだけたくさんの出演者がいたのに、インタビューされてるのは有名人が多くて、一般の出演者は少ししか取り上げられなかった。それだけはすごく勿体ないと思ったな!
岡 
そういった感覚のズレの原因って、一体なんなんだろうね?
かんばら 
そもそもオリンピックとパラリンピックの格差がすごいんだよね。多様性の社会とは言うものの、パラリンピックは民放ではほとんど放送されなかったし。
岡 
そういうメディアでの扱われ方も、障害者を取り巻く社会側の障害のひとつだよね。

見つめる先にあるのは、踊り手としての本質

岡 
今回のパラリンピックでも、華やかな部分とともに日本のまだまだな部分が浮き彫りになったわけだけど・・・かんばらくんが踊り続けるのって、そういう社会への反骨精神だったり、メッセージっていうのも含まれてたりするの?
かんばら 
うーん・・・まず「俺は社会貢献のために踊ってない」ってのははっきり言い切れるな。もちろんそういうメッセージ性が込められた作品を否定するつもりはないけれど、俺はそれをメインにするよりも、やっぱりパフォーマンスで「かっこいい」とか「美しい」とか「すごい」っていう直感的なインパクトを与えることを大事にしたいと思ってる。
岡 
「メッセージ性」と呼ばれるものよりも、もっと直感的で本質的な部分を軸にしてるわけだね。
かんばら 
あえて言うなら、俺は人と違う体だということを活かしてパフォーマンスしてるから、観ている人にも「違うから面白い」っていう感覚を経験して欲しいって気持ちはあるけどね。俺が子どもたちの前で踊るのもそれが理由。というのも、「人と違うことが面白い」と感じた、または感じてもらえた経験を持つ子どもって、意外と少ないんだよね。
岡 
多くの子どもたちが、まだまだ「みんなと同じ」ことを求められてしまっているんだね。
かんばら 
そうそう。なのに、大人になってからいきなり多様性多様性って言われて。そんなの腹落ちするわけないと思うの。だから、小さい頃からその面白さを経験することで、人と違うことをコンプレックスに思わずにいられるようになって欲しいなって思うんだよね。
岡 
うんうん。
かんばら 
実際に学校で講演した時、小学2年生の子から「かんばらさんから『みんな違うのが当たり前」という言葉を聞いて、とても安心しました」っていう感想をもらったことがあったんだよね。そこにすごく意義を感じて。そうやって、全員じゃなくていいからちゃんと届く子に刺さればいいなって思いはあるかな。
岡 
俺も初めてかんちゃんと会った時、シンプルに「すげえ!!!」って思ったもん。だからTHE UNIVERSEをはじめとする色んなプロジェクトを一緒にやりたいと思ったわけだしね。

△かんばらけんたさんもダンサーとして参加したUbdobeのパフォーマンス集団THE UNIVERSE

岡 
武道館に、パラリンピックにと、これまで大きな舞台での経験をたくさん積んできたかんばらくんだけど、この先のイメージってどんなものを抱いているの?「ここまで上り詰めたい!」っていう目標とかってあったりするのかな?
かんばら 
まずステージの大きさやお客さんの数に関する目標はあんまりなくて。それよりも「もっとスキルを上げたい」とか「もっと色んなジャンルを覚えたいとか」そういう目標の方がずっと強いかな。パラリンピックの大舞台が終わって、やっと自由な時間が増えたから、これからしばらくはそういう時間に使いたいなって思ってる。
岡 
いいねー!舞台の大きさじゃなくて、ひたすら自分の感覚を研ぎ澄ますっていうその感じ、とってもかんばらくんらしいよね!これからも応援しています!今日はありがとう!!!

 

 

 
< 本記事の登場人物 >


 

 

 

 

 

 

 

かんばらけんた
車椅子ダンサー
サーカスパフォーマー

フリーの車椅子ダンサー、サーカスパフォーマーとして活動。
車椅子の上での逆立ちなど、上半身を最大限に生かした技が特徴。
先天性二分せきつい症という障害をもって生まれる。
TV CMの出演や、学校での講演も行っている。

2019年: 韓国で開催された国際障害者ダンスフェスティバル「KIADA 2019」にソロ出演 2019年: カゴメ株式会社のCMに出演
2021年: 東京2020パラリンピック開会式出演

■SNS
Instagram: https://www.instagram.com/kenta.kambara/
Twitter: https://twitter.com/kamb86
Facebook: https://www.facebook.com/kambara/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岡 勇樹
NPO法人Ubdobe 代表理事
株式会社デジリハ 代表取締役
ONE RECORD STORE 店主

1981年東京生まれ。幼少期の8年間をサンフランシスコで過ごし、音楽漬けで帰国。母と祖父の病気や死がきっかけで高齢者介護・障がい児支援の仕事に従事。現在は医療福祉系クラブイベントや謎解きイベント事業・デジタルアート型リハビリコンテンツ事業・オンラインのレコードショップなどを展開。2021年末オープンの障害者訪問介護事業も準備中。

■SNS/WEB
Twitter:https://twitter.com/UQ_Ubdobe
note:note.mu/uqoka

Ubdobe:https://ubdobe.jp
Digi Reha:https://www.digireha.com
Record Store:https://www.onerecordstore.com

 

編集:はぎわらしょうこ