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あっちもこっちも違和感だらけ?!はっぴーの家の「死生観」が子どもたちにもたらした変化とは?

 

NPO法人Ubdobe代表の岡が、医療福祉に関わる「おもろい人」から話を聞き出す新コーナー。
第二回のゲストは はっぴーの家 代表、首藤義敬さんです!

※はっぴーの家の概要についてはぜひこちらの記事もご覧ください。
https://ubmag.jp/interview/post-4822

 

はじまりは、『子どもたちのため』。

岡 
首藤くん、今日はよろしくお願いします!さっそくだけど、最近はどんな生活をしているの?

首藤さん 
前は出張で年間70-80回くらい出かけてたから月の半分くらい家にいなかったんですよ。だけど、コロナ禍になってからは家族に時間を使うようになって・・・最近は、めっちゃ子育てしてます!!

岡 
おー、子育て!首藤くん自身も、はっぴーの家に住んでるんだっけ?

首藤さん 
そうです。元々はっぴーの家って、うちの子どもたちのために作ったものなので。というのもうちの子、特に長女は、俺に似て学校に馴染まんやろうなあと思ったから、学校以外の人との出会いや学びがある場を作りたいって思い立ったのが始まりなんです。

岡 
はっぴーの家を作ってからの子どもたちの様子はどう?

△ 多様な命の形が混在する、はっぴーの家の日常

首藤さん 
結局、長女も今では色んな人に囲まれながら学校行ったり、土日もはっぴーの家で出会った人と遊びに行ったりと楽しそうにしてますね。一方、上の男の子が中学に進学する時には僕はすごく悩みました。長男は、昔からコミュ力もあるし、抑えるとこ抑えるしで、なんでも上手くこなすタイプだったんです。

岡 
えーっと・・・それのどこに問題が?

首藤さん 
そんな彼にとって普通の中学校に行くことが本当に学びになるのか?ってのが疑問だったんですよね。

岡 
おー、なるほど。

首藤さん 
親が子どもの人生に介入できるのって中学くらいまでじゃないですか。だから、進学のタイミングで「3年間だけ僕のわがまま聞いてほしい!」って話をして、彼には進学しない道を選んでもらったんです。

岡 
え?!それは思い切ったね。じゃあ今息子さんは何して過ごしているの?

首藤さん 
はっぴーの家はフリースクールもやっていて、そこで小・中学校の卒業証書も取れるんです。彼は週2回、そこの手伝いをしてもらっています。あと、週1回は通信制のいわゆる「意識高い系」の中学校に通っていて。さらに残りは僕らの仕事に付き合ってもらってます。

岡 
仕事、っていうのは具体的に何をしているの?

首藤さん 
簡単に言うと僕の秘書です。実際に、色々な現場に連れて行くこともありますね。

岡 
ほー。面白いね。首藤くんが息子さんにそういった「普通ではない」経験をしてほしいと思った一番の理由は何だろう?

首藤さん 
僕、普段から「自分は40歳までしか生きられない」と思って生活してるんです。今が35歳だから、残すはあと5年。その5年で果たすべき一番の使命は、子どもたちに成長の機会を与えることだと思ってるんですよね。

岡 
ふむふむ。

首藤さん 
僕たちの子どもの世代が大人になった時を想像してみると、まず少子化の影響で『同世代』という存在が少なくなってると思うんです。きっと一緒に仕事をする人も、違う世代の人がほとんど。一方で海外の労働力がどんどん入ってくるから、違う国・違う文化の人と仕事をすることが増えるんじゃないかなって。

首藤さん 
だから、学校でやるような「同じ世代の中で日常を過ごす」ことが、今ほど活きない社会になっていくんじゃないかと思うんですよ。もちろん同世代と過ごす青春ってのも大事だと思うんだけど、うちの子にとってどっちがいいのかを考えた時に、普通の中学校がピンとこなかったんですよね。

岡 
なるほどねー、確かに。俺はアメリカで小学校通っていたんだけど、周り見渡す限り別人種で、互いに罵倒したり仲良くしたりめちゃめちゃカオスだったな。そこで得た感覚みたいなのは確かにあるかもしれない。

首藤さん 
これからの時代はどんどん「答えのない」問題と向き合うことが増えていく。だから息子にも、自分で考えなきゃいけないストレスを暮らしの中で与えることが大事だと思いました。学校で『答えを求められる授業』をこなすんじゃなく、一般社会の中で『答えのない授業』をして学んで欲しかったんです。

 

「死生観」が子どもたちを変える

△ 麻雀で多世代交流?!

岡 
そういう意味で、はっぴーの家の存在が子どもたちにもたらしてる影響ってどんな感じなんだろう?

首藤さん 
例えばはっぴーの家では、1時間前にじいちゃんばあちゃんに言ってめっちゃ喜ばれたことを、1時間後に同じようにやってブチギレられたりするんですよ(笑)そこに事前に用意された答えはなくて。そういう環境と向き合いながら、瞬間瞬間でどういう判断をするか?を学んでいると思います。

岡 
なるほどね!「この人は認知症」とかそういうインプットではなく、生身の人間同士がぶつかり合う感じだ。僕がはっぴーの家に行った時に感じた良さがそこだったな。他にもそういう体験ってあるの?

首藤さん 
人生で起きる最も大きなトラブルは「人が死ぬこと」ですよね。はっぴーの家では約2ヶ月に1回看取りがあるので、その死が彼らにとって一番の学びになっているんじゃないかなと思います。身近な人が死ぬと「生きている間にこういうことをしたかった」という後悔が生まれる。死を通して、子どもたちが今この瞬間を大事にするようになっているんです。僕らが掲げる『NO 死生観 NO LIFE』という言葉を体現してくれています。

△ 日常的に死にまつわるモノコトに触れる子どもたち

岡 
なかには、人が死ぬということに耐えられないという人も多いと思うけど、はっぴーの子どもたちはどうなんだろう?

首藤さん 
はじめに死に対してネガティブな思いを持っていた人も、はっぴーの家で過ごすうちにどんどん変わっていくんです。最近の話でいうと、うちのフリースクールに、小学校5年生から学校に行っていない男の子が来まして。その子は、おじいちゃんおばあちゃんに関わったこともなければ、興味もない。でもある日なぜか突然「この場所で麻雀やりたい」って言い出したんです。

岡 
麻雀!!!笑

首藤さん 
はい。よくよく聞いてみると「僕は18歳じゃないからまだ雀荘には行けないけど、ここには麻雀好きなじいちゃんばあちゃんいるから麻雀ができる!ここを雀荘にすれば、僕もここで遊べる!」ってことらしくて。

岡 
なるほど、かしこい。

首藤さん 
それがきっかけではっぴーの家にいた麻雀好きなおじいちゃんと仲良くなっていったんですけど、実はそのおじいちゃん、余命が2ヶ月なんです。食もどんどん細くなっていた時で。でもね、面白いことに、僕らと夜更かしして麻雀してる時は一緒にラーメン食べるんですよ。んで、そんな経験をしているうちに、今度は3食たべられるようになって・・・。

岡 
わはは。よっぽど楽しかったんだね、麻雀。

首藤さん 
そうなんですよ。で、そしたらその男の子も「自分の行動が人に変化をもたらす」という成功体験を積んだようで、そのおじいちゃんのためにはっぴーの家に通うようになったんですよね。

岡 
そこで相互作用が起こったんだね。

首藤さん 
結局、そのおじいちゃんは亡くなってしまったんですけど。なんとその子「俺、あのじいさんが亡くなったら弔い麻雀やるって決めててん」って言って、お通夜の場で麻雀大会始めたんですよ。

岡 
えー!めちゃくちゃいい話じゃん!

首藤さん 
ちなみに今は、弔いのためにおじいちゃんのだっさいチョッキを羽織って、自転車で四国八十八箇所を廻る旅をしています。そうやって、全然関係ない子どもたちとおじいちゃんおばあちゃんが混ざり合うことで、日々いろんなドラマが生まれてるんです。

 

受け入れる?共感する?はっぴーの家首藤とUbdobe岡が考える『ダイバーシティ』

△ パーティーを楽しむはっぴーの家の住人たち

岡 
麻雀に、ラーメン・・・。普通の介護施設でそういうことやると、結構批判を撃ち込まれるじゃない?はっぴーの家はそういうのってされたことあるの?

首藤さん 
それが、全然ないんですよね。たぶん僕たちは頭おかしいと思われてるから、そういう人が近づいてこないんです。笑

岡 
笑。最近だと、深夜におじいちゃんにラーメン食べさせて炎上したツイートが記憶に新しいよね。

首藤さん 
あれだって、めちゃくちゃいい話じゃないですか!僕たちその時、死にかけのじいちゃんと徹マン(※ 徹夜麻雀の略)して酒飲みながら一緒にラーメン食べてましたから、それがダメだったら俺ら逮捕されるやん!と思いましたね。

岡 
確かに。笑

首藤さん 
ああいった批判って自分たちと同じ界隈で仕事をしている人たちに対しての意見だと思うんですけど、たぶんはっぴーの家は同志だと思われてないんですよね。

岡 
今の時代、人のアラを探したい人はたくさんいるから、はっぴーの家がそういう人の標的になってないのは意外だなー

首藤さん 
たぶん、うちは論点が多すぎるんですよ。ばあちゃんの頭にドローンが激突してたり、その横で外国人が踊ってたり、そこらじゅう違和感しかないから。ワンポイントの論点だったら突っつきがいがあるけど、うちは素材がありすぎて絡みにくいんじゃないかと思います。あと、そもそも僕らは、自分たちがしていることが素晴らしいことだと思ってないんです。そういう雰囲気もあって一般の介護施設に比べてつつき甲斐がないのかもしれませんね。

岡 
はっぴーの家は進化し続けているようだけど、首藤くんがこれから新しくやりたいことってなにかあるの?

首藤さん 
今一番やりたいのは、クラフトビールの事業ですね!

岡 
これまた意外なやつが来ましたね。

首藤さん 
正確には、ビールを作りたいというより「その人の人生をビールという商品でアウトプットをしたい」という感じです。僕たちが住む街にはお酒で人生崩したおっちゃんがいっぱいいるんですよ。だからその人の顔がデザインされたラベルに、失敗ストーリーを添えて売りたくて。

岡 
なにそれめっちゃ面白いじゃん。

首藤さん 
コンセプトは、社会不適格者が作る社会不適格者のためのビールです。自分のマイノリティを笑いに変えて届けることって、すごく豊かな経験だと思うんです。もちろん助けが必要な人には手が差し伸べられるべきだとは思いますけど、一方で、クズがクズのまま死ねる社会も結構はっぴーだなと思って。そういうのもうちだから伝えられる価値観だと思ってます。

岡 
そっか、はっぴーの家がある六間商店街って、元々ファンキーな町なんだよね?

首藤さん 
そうなんですよ。神戸の下町なので、マイノリティな人がものすごく多くて。どんな人間がいても、いい意味で興味持たれないんですよね。それってすごくダイバーシティだなって思います。岡さんのクラブイベント見てても、丁寧にやっている一方で障害がある人に媚びてないじゃないですか。そのスタイルが好きだし、僕らの考えに似てるなと思いますね。

△ NPO法人Ubdobeの医療福祉系クラブイベント SOCiAL FUNK!

岡 
そうだね。基本的に「障害があるから受け入れよう」という考え方はすごく気持ち悪いと思っていて。自分がイベントをやる時も「めっちゃいいアーティスト見つけたからみんな聞け」っていうくらいの感覚でやってるんだよね。その「みんな」が結果としてダイバーシティになっているというか。

首藤さん 
そうそう。僕らも「共感し合う」ことがダイバーシティだと思ってないです。むしろ「絶対理解できないわ」と思うけど一緒にいれるってことがソレだと思ってるので。表面上のダイバーシティには全く興味がないですね。

岡 
うんうん。だから首藤くんが好きだよ!首藤くんの考え方は、事業としても人生としてもシンプルにいいなって思った。俺自身、とっても勉強になりました!今日は本当にありがとう!

 

 

 
本記事の登場人物
 

 

 

 

 

 

首藤義敬
株式会社Happy 代表取締役
 
カオスクリエイター。家というハードを紹介するだけで暮らしは豊かにならない、マタニティアートから葬儀まで、暮らしに関わるソフト面までも伴走する不動産屋「株式会社Happy」代表取締役。 自身が夫婦共働きで子育てと祖父母の介護のに追われ、日本社会の介護と子育ての両立の難しさを痛感する。ダブルケアに悩む子育て世代が自分たちだけでない事に気付き新しいライフスタイルを創る事を決意。 企画の段階から100人以上の町の人と議論を重ねつくった多世代型介護付きシェアハウス「はっぴーの家ろっけん」を自分自身の子育てと介護のダブルケアを解消するために設立。現在は週に200人が遊びにくるカオスなリビングとなっている。”遠くのシンセキより近くの他人”の価値を見直すことで、子育ても介護も若者も暮らしが豊かになるという仮説を検証中。
http://y-shuto.com
https://www.facebook.com/rokken.happy.home/

 

 

 

 

 

 

 

 

岡 勇樹
NPO法人Ubdobe 代表理事
株式会社デジリハ 代表取締役
ONE RECORD STORE 店主

1981年東京生まれ。幼少期の8年間をサンフランシスコで過ごし、音楽漬けで帰国。母と祖父の病気や死がきっかけで高齢者介護・障がい児支援の仕事に従事。現在は医療福祉系クラブイベントや謎解きイベント事業・デジタルアート型リハビリコンテンツ事業・オンラインのレコードショップなどを展開。2021年末オープンの障害者訪問介護事業も準備中。

■SNS/WEB
Twitter:https://twitter.com/UQ_Ubdobe
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Ubdobe:https://ubdobe.jp
Digi Reha:https://www.digireha.com
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編集:はぎわらしょうこ